慢性関節リウマチ患者に対する高用量と標準用量の不活化インフルエンザワクチンの免疫原性及び安全性の比較検討:無作為・二重盲検・実薬対照研究
Immunogenicity and safety of high-dose versus standard-dose inactivated influenza vaccine in rheumatoid arthritis patients: a randomised, double-blind, active-comparator trial
Inés Colmegna1, Mariana L Useche, Katherine Rodriguez, Deirdre McCormack, Giuliana Alfonso, Aakash Patel, Agnihotram V Ramanakumar, Elham Rahme, Sasha Bernatsky, Marie Hudson, and Brian J Ward

1Research Institute of the McGill University Health Centre, Montreal, QC, Canada
Lancet Rheumatol 2020, Published:November 20, 2019, DOI:https://doi.org/10.1016/S2665-9913(19)30094-3
慢性関節リウマチ患者(以下RA患者)は季節性インフルエンザ及びインフルエンザ関連合併症のリスクが高い。しかし、RA患者はワクチンによる免疫の獲得力が弱いと報告されている。高用量ワクチンを投与することにより免疫力が賦与できるのか確かめてみる必要がある。そこで、RA患者に、「標準用量」の四価インフルエンザワクチン(SD-QIV)と「高用量」の3価不活化インフルエンザワクチン(HD-TIV)のどちらかを投与して、抗体形成率と有害事象の発生状況(安全性)を比較検討した。2016 - 17年及び2017 - 18年のインフルエンザシーズン中に、マギル大学(カナダ、ケベック州モントリオール)に関係する3病院のRA患者を2016年10月24日 - 2017年12月6日間の696例の患者に研究の参加を依頼し、279例の参加者を得た。患者を、SD-QIV又はHD-TIVの接種群に無作為(1:1)に割り付けた。無作為化はコンピュータで生成の割り付け順に基づいた。SD-QIVの接種群140例、HD-TIVの接種群139例となった。SD-QIV接種者136例とHD-TIV接種者138例については修正intention-to-treat解析を行った。RA患者は、リウマチ因子又は抗環状シトルリン化ペプチド、あるいは両方が陽性の成人とした。患者は治療中の者で、登録前3か月間の治療薬には変更があった者はいなかった。登録時の治療薬剤により3グループに分けた。グループ1は、合成DMARD又は分子標的合成DMARD(メトトレキサート、ヒドロキシクロロジン及びスルファサラジン)の単剤又は併用療法の患者とした。グループ2は、生物学的DMARD(抗腫瘍壊死因子又は抗インターロイキン6)の服用患者(他剤併用の有無に関わらない)とした。グループ3は、アバタセプト、トファシチニブ又はリツキシマブの服用患者(他剤の併用の有無を問わない)とした。これらの治療層別に無作為化二重盲検法により分析した。ワクチンの効力の判定は、インフルエンザウイルス株に対する28日目の血清の抗体陽転率(血球凝集抑制試験で測定)を用いた。安全性は全期間で評価した。各インフルエンザ株に対するSD-QIV接種者と比較したHD-TIV接種者の血清抗体陽転率のオッズ比でワクチンの効能を評価した。A/H3N2株のオッズ比は2.99(95%CI 1.46 - 6.11)、B/Bris株のオッズ比は1.95(1.19 - 3.22)、A/H1N1株のオッズ比は3.21(1.57 - 6.56)(2016 - 2017年)、A/H1N1株のオッズ比は2.44(1.18 - 5.06)(2017 - 2018年)であった。グループ1及び2の患者に分けても同様の結果であった。グループ3の患者数は少なく評価できなかった。局所及び全身の有害事象は、両ワクチン群で差が認められなかった。また接種による関節リウマチの悪化も認めなかった。
コメント
慢性関節リウマチ患者に対する薬剤は免疫力を抑えるものが多い。そのため、インフルエンザの感染は命取りになる。標準用量のワクチンでは免疫賦与が不十分であると報告されていたため高用量の抗原を用いたワクチン(HD-TIV)を使うと免疫力を高められるのではないかとして検討したのが本研究である。HD-TIVを使用すると従来の合成薬による患者だけでなく生物学的製剤の治療患者に対しても高い免疫力の上昇効果があることが示された。患者の年齢に関わらず優れた免疫原性を認められた。有害事象の増加もなく、病気の活動性に影響することもなかった。慢性関節リウマチ患者、特に高齢者に対し、HD-TIVを使うことによりインフルエンザによる犠牲者を大幅に減らせる可能性を示唆する貴重な研究であると思われる。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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