2022年度 第28回 助成事業報告
- 本年度も新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から助成金贈呈式も中止とし、Webサイト上での事業報告といたしました。
選考委員長より今年度の選考経過をご報告しておりますのでご確認ください。
また、ご挨拶をご寄稿いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
<目次>
- 理事長挨拶
- 2022年度 第28回 医学研究助成および国際交流助成、知識の普及啓発事業助成受贈者の皆様、この度は誠におめでとうございます。
本来であれば助成金贈呈式に皆様お集まりいただき、受贈者の皆様お一人お一人をご紹介させていただくところではありますが、昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大防止のため式典の開催を見送ることとなりました。
財団創設より28年、毎年度このように助成事業を行うことができますのも、ひとえに当財団の事業活動に対する多大なるご理解とご支援、ご寄附の賜物でございます。この場をお借りして感謝申し上げます。
今後も地道に努力を重ねられている難病研究者の皆様をご支援できるよう努力してまいりますので、ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。
- 公益財団法人大阪難病研究財団
理事長 籔本 武志
- 選考経過報告
2022年度助成事業(医学研究助成、国際交流助成、知識の普及啓発事業)と第4回籔本秀雄賞の選考経過を報告致します。
まず始めに、助成を受けられます皆様に心からお慶びを申し上げます。助成金を有効に活用され、難病の治療につながる研究成果をあげられますことを期待しております。また、優れた研究課題をご推薦いただきました推薦者の先生方に、心より御礼申し上げます。
大阪難病研究財団の理事会において、難病研究の促進のための助成を今年度も行うことが決定されました。助成の趣旨は、「国内外での難病研究に対して積極的に助成することにより研究を促進し、難病治療の問題・課題の解決を図る」というものです。助成額は1件あたり100万円が上限です。医学研究助成と国際交流助成の助成対象は、難病の研究にあたっている大学、医科大学、研究所、医療機関、保健施設等に所属している若手研究者とし、原則として40歳以下としています。今年度は、本財団が、平成7年に研究助成を始めて以来、通算28回目になります。理事会の決定を受けて公募を行いました。公募は財団ウエブサイトへの掲載と関係諸機関への募集要項の案内により行いました。その結果、医学研究助成へ68件、国際交流助成へ2件の応募がありました。
選考委員会では、7名の選考委員が全ての申請書を読み3段階評価し、A評価に5点、B評価に3点、C評価に1点を与えました。研究グループに親族、所属など選考委員と利害関係がある場合には、当該委員はその申請の評価を行いませんでした。選考にあたっては、若手に幅広く助成するという考え方をとっています。
本年度の医学研究助成には4,300万円の予算が当てられました。応募された68件を得点に基づいて選考しました結果、上位の39件に希望額を助成することといたしました。さらに、できるだけ広く助成を行うとの観点から上位に次ぐ評価点を得た6件に70万円ずつ助成することを決定いたしました。結果として、38件に100万円ずつ、1件に80万円、6件に70万円ずつの計45件に助成することといたしました。残念ながら、23件につきましては選外とさせていただきました。
国際交流助成に応募された2件は、どちらも国際共同研究によって難病研究に取り組むという内容で国際交流助成の趣旨に合致した優れた課題でしたので、100万円ずつの助成を決定いたしました。
採択されました課題は、いずれも助成の趣旨にかなったもので、研究の進展が期待できるものでありました。助成を受けられる皆様が所期の目標を目指し、大いに奮闘されますことを期待しております。
この助成事業は、当財団の趣旨にご賛同いただいた皆様の寄附によって実施できるものであります。そのことを念頭に置いて助成金の有効な活用をお願いいたします。そして、来年5月末には立派な成果を報告書として提出いただくことを選考委員会としてお願いいたします。
また、難病に関する知識の普及啓発事業に3件の応募がありました。評価の結果に基づき選考し、1位に60万円、2位に40万円の助成を行うことを決定いたしました。
次に第4回籔本秀雄賞の選考について報告いたします。籔本秀雄先生は、大阪難病研究財団の創設者であります。2019年の財団理事会におきまして、先生の長年にわたる難病研究へのご貢献を顕彰するとともに、難病克服へ向けた研究を奨励するため、先生の名を冠した賞を創設することが決定されました。具体的には、本財団の医学研究助成を受ける若手研究者を対象とし、得点上位の研究課題のうち本賞の趣旨に最も適した課題を申請した研究者1名を受賞者として選定します。受賞者には賞状と研究奨励金として副賞50万円を贈呈します。選定は選考委員長の責任において行い、理事会に報告することとしております。優秀な若手研究者による特に優れた難病研究に対し、籔本秀雄先生の名を冠した賞とともに助成を行い、難病研究を一層奨励するとともに、先生の長年にわたる難病研究へのご貢献を顕彰するとの趣旨であります。
さて本年の第4回籔本秀雄賞の選考ですが、医学研究助成受贈者45名のうち得点上位の5名を対象に選考を行いました。本賞の趣旨に最もふさわしいと判断した研究課題を応募された、大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学所属の大学院生である井原拾得氏を受賞者として選定しました。井原氏の研究課題は「脂質異常症と高血圧が相乗的に動脈硬化や臓器障害を増悪させる新規メカニズムの解明」です。本研究では、脂質異常症と高血圧が相乗的に心血管病の発症と進展に関与するメカニズムを分子レベルで明らかにしようとしています。井原さん、第4回籔本秀雄賞の受賞誠におめでとうございます。貴君の難病研究が一層進展しますことを祈念しております。
以上の通り、大阪難病研究財団の2022年度の助成事業と第4回籔本秀雄賞についてご報告いたします。
- 選考委員長 木下 タロウ
(大阪大学微生物病研究所 特任教授)
- 祝辞
第28回公益財団法人大阪難病研究財団助成金を受贈されるみなさまに心からお祝いを申し上げます。
また、公益財団法人大阪難病研究財団におかれましては、財団設立当初より難病医療の水準向上と難病患者の在宅医療の推進にご尽力を賜りまして、この場をお借りしまして御礼申し上げます。
難病は、その疾患の特性から患者の多くは長期にわたる療養生活を余儀なくされており、1日も早い原因究明と治療法の確立が望まれています。
皆様の研究成果が、今後の難病医療の発展に大きく寄与されることを心から祈念しておりますとともに、この度の受贈を機に、難病研究のさらなるご研鑽を賜りますようお願いします。
結びに公益財団法人大阪難病研究財団の益々のご発展と、皆様のご健勝、ご活躍を心から祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。
- 大阪府健康医療部保健医療室地域保健課
課長 對馬 英雄
- 助成受贈者代表挨拶
《第4回籔本秀雄賞》
大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学 井原 拾得 氏
- 【研究課題】 脂質異常症と高血圧症が相乗的に動脈硬化や臓器障害を増悪させる新規メカニズムの解明
この度は研究助成ならびに第4回籔本秀雄賞を授与いただき、誠にありがとうございます。
日々行なってきた研究がこのようにご評価いただけたことを大変光栄に思うと同時に、身の引き締まる思いです。ご評価頂いた大阪難病研究財団の方々をはじめ、何より日々、研究指導をして頂いている先生方や、研究室の同僚、研究助手の方々、その他これまで私の研究に関わってくださったすべての方々に感謝申し上げます。
大阪大学大学院医学研究科 老年・総合内科には老年関連の3つの研究グループ(認知症グループ、代謝・糖尿病グループ、高血圧・老化グループ)と総合診療グループがあり私の所属する高血圧・老化グループではレニン・アンジオテンシン系の研究から高血圧発症の遺伝子の検索に至る幅広い研究を伝統的に行ってまいりました。
特に最近はアンジオテンシンⅡの受容体の一つであるアンジオテンシンⅡ1型受容体と脂質異常症で増加する酸化LDLの受容体であるレクチン様酸化LDL受容体の相互作用に関する研究を積極的に行なっております。これまでにアンジオテンシンⅡ1型受容体とレクチン様酸化LDL受容体が細胞膜上で複合体を形成していることや、酸化LDLによるシグナル伝達機構や酸化LDLの細胞内取り込みにアンジオテンシンⅡ1型受容体が関与することを明らかにしました。さらに現在行なっている検討ではアンジオテンシンⅡによるアンジオテンシンⅡ1型受容体の活性化機構が酸化LDLの同時投与でより一層増強することを見出しました。この現象は腎臓線維芽細胞、腎臓近位尿細管上皮細胞、副腎細胞で認めました。現在はこれらのアンジオテンシンⅡと酸化LDLの同時投与による増強作用が腎臓や副腎でどのように影響を及ぼすのかについて、具体的には腎機能障害や副腎におけるアルドステロン合成が増強するのかということをマウスを用いて検討しております。
本研究は脂質異常症と高血圧症の直接的な因果関係を解明する基盤になると考えられる他、アンジオテンシンⅡ1型受容体が有する新たな役割「循環老廃物を細胞内に移行させる機能」を抑制することへの病態生理学的意義解明、すなわち従来のARBを超えた臓器保護作用を有する降圧薬の創薬を進展させる基盤になることが期待されると考えております。
今回このようにご評価いただけたことを糧に今後とも一層努力し精進して参る所存です。本当にありがとうございました。