助成事業

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2024年度 第30回 助成事業報告

本年度も助成金贈呈式は中止とし、Webサイト上での助成事業報告をさせていただくこととなりました。
選考委員長より今年度の選考経過をご報告しておりますのでご確認ください。
また、ご挨拶をご寄稿いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
<目次> 

理事長挨拶
 2024年度 第30回 医学研究助成および国際交流助成、知識の普及啓発事業助成受贈者の皆様、この度は誠におめでとうございます。
 本来であれば助成金贈呈式に皆様お集まりいただき、受贈者の皆様お一人お一人をご紹介させていただくところではありますが、昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大防止のため式典の開催を見合わせることとなりました。
 財団創設より30年、毎年度このように助成事業を行うことができますのも、ひとえに当財団の事業活動に対する多大なるご理解とご支援、ご寄附の賜物でございます。この場をお借りして深謝申し上げます。
 今後も地道に努力を重ねられている難病研究者の皆様をご支援できるよう努力してまいりますので、ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
公益財団法人大阪難病研究財団
理事長 籔本 武志
選考経過報告
 公益財団法人大阪難病研究財団の2024年度助成事業(医学研究助成、国際交流助成、知識の普及啓発事業)と、第6回籔本秀雄賞の選考経過を報告致します。今年度の助成事業は平成7年の助成開始以来第30回目に当たります。
 最初に、今年度の助成を受けられます皆様にお祝いを申し上げます。助成金を有効に活用され、難病の治療につながる研究成果をあげられますことを大いに期待しております。また、優れた研究課題をご推薦いただきました推薦者の先生方に、厚く御礼申し上げます。

 本年3月に開催された大阪難病研究財団の理事会において、難病研究の促進のための助成事業を今年度も行うことが決定されました。助成の趣旨は、「国内外での難病研究に対して積極的に助成することにより研究を促進し、難病治療の問題・課題の解決を図る」というものです。助成額は1件あたり100万円が上限です。助成対象は若手研究者とし、原則として40歳以下としています。理事会の決定を受けて1ヶ月間公募を行いました。その結果、医学研究助成へ80件、国際交流助成へ5件、知識の普及啓発事業に2件の応募がありました。
 選考委員会では、6名の選考委員が全ての申請書を読んで3段階評価し、A評価に5点、B評価に3点、C評価に1点を与えました。研究グループに親族、所属など選考委員と利害関係がある場合には、当該委員はその申請の評価を行いませんでした。選考にあたっては、若手に幅広く助成するという考え方をとっています。

 本年度の医学研究助成には4,350万円の予算が当てられました。応募された80件を得点に基づいて選考しました結果、上位の30件に満額を助成することと致しました。さらに、できるだけ広く助成を行うとの観点から上位に準ずる評価点を得た26件に50万円ずつ助成することを決定いたしました。残念ながら、24件につきましては選外とさせていただきました。
 次に国際交流助成について報告いたします。応募された5件のうち上位2件は、どちらも国際共同研究によって難病研究に取り組むという内容で国際交流助成の趣旨に合致した優れた課題ですので、100万円ずつの助成を決定いたしました。
 知識の普及啓発事業に応募の2件はどちらも趣旨にあった有意義な事業と評価され、事業規模に合わせ70万円と30万円の助成といたしました。
 採択されました課題は、いずれも助成の趣旨にかなったもので、研究の進展が期待できるものでありました。助成を受けられる皆様が所期の目標を目指し、大いに奮闘されますことを期待しております。

 この助成事業は、当財団の趣旨にご賛同いただいた皆様の寄附によって実施できるものであります。そのことを念頭に置いて助成金の有効な活用をお願いいたします。そして、来年5月末には立派な成果を報告書として提出いただくことを選考委員会としてお願いいたします。

 次に第6回籔本秀雄賞の選考について報告いたします。令和元年の財団理事会におきまして、大阪難病研究財団の創設者であります籔本秀雄先生の長年にわたる難病研究へのご貢献を顕彰するとともに、難病克服へ向けた研究を奨励するため、先生の名を冠した賞を創設することが決定されました。具体的には、本財団の医学研究助成を受ける若手研究者を対象とし、得点上位の研究課題のうち本賞の趣旨に最も適した課題を申請した研究者1名を受賞者として選定し、賞状と研究奨励金として副賞50万円を贈呈します。選定は選考委員長の責任において行い、理事会に報告することとしております。優秀な若手研究者による特に優れた難病研究に対し、籔本秀雄先生の名を冠した賞とともに助成を行い、難病研究を一層奨励するとともに、先生の長年にわたる難病研究へのご貢献を顕彰するとの趣旨であります。
 さて第6回籔本秀雄賞の選考ですが、本年度の医学研究助成受領者56名のうち得点上位の8名を対象に選考を行いました。本賞の趣旨に最もふさわしいと判断した研究課題を応募された、大阪大学大学院歯学研究科顎顔面口腔外科 助教 内橋 俊大氏を受賞者として選定しました。内橋氏の研究課題は「口腔扁平上皮癌自然発癌モデルを用いた第三世代がん治療用HSV-1の治療効果の検討」です。本研究は、最新の抗がんウイルス治療を適用し口腔がんの新規治療法開発に取り組むチャレンジングな研究です。内橋先生、第6回籔本秀雄賞の受賞誠におめでとうございます。先生の難病研究が一層進展しますことを祈念しております。

 最後に 、当財団の難病についての調査研究に関する事業では、理事会で決定された難病に関するテーマを、然るべき研究者に特に委託し調査研究をお願いしています。本年度は1機関にお願いしております。また、同事業の一環として2022年6月に「22世紀難病ラボ」を設置いたしました。本年度は理事会で決定された2つの研究テーマについて研究を実施しております。

 以上の通り、大阪難病研究財団の2024年度の助成事業と第6回籔本秀雄賞についてご報告いたします。

選考委員長  木下 タロウ
(大阪大学感染症総合教育研究拠点 特任教授)

祝辞
 第30回公益財団法人大阪難病研究財団助成金を受贈されるみなさまに心からお祝いを申し上げます。
 また、公益財団法人大阪難病研究財団におかれましては、財団設立当初より難病医療の水準向上と難病患者の在宅医療の推進にご尽力を賜りまして、この場をお借りしまして御礼申し上げます。
 難病は、その疾患の特性から患者の多くは長期にわたる療養生活を余儀なくされており、1日も早い原因究明と治療法の確立が望まれています。
 皆様の研究成果が、今後の難病医療の発展に大きく寄与されることを心から祈念しておりますとともに、この度の受贈を機に、難病研究のさらなるご研鑽を賜りますようお願いします。
 結びに公益財団法人大阪難病研究財団の益々のご発展と、皆様のご健勝、ご活躍を心から祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。

大阪府健康医療部保健医療室地域保健課
課長  對馬 英雄 様

助成受贈者代表挨拶
《第6回籔本秀雄賞》
大阪大学大学院歯学研究科 顎顔面口腔外科学講座 内橋 俊大 先生
【研究課題】 口腔扁平上皮癌自然発癌モデルを用いた第三世代がん治療用HSV-1の治療効果の検討

 この度は、研究助成ならび第6回籔本秀雄賞を授与いただき誠にありがとうございます。このような素晴らしい賞をいただき、誠に光栄であると共に、身の引き締まる思いでございます。私の研究をご評価していただきました、大阪難病研究財団の皆様、これまで一貫して10数年ご指導ならびに共同研究を行ってくださいました、東京大学医科学研究所先端がん治療分野・藤堂具紀教授、研究室の同僚・先生方、また母教室の大阪大学大学院歯学研究科顎顔面口腔外科学講座医局員の先生方に厚く御礼申し上げます。
 研修医だった15年ほど前に、口腔癌患者の、進行癌となった際に予後不良であることはもちろんのこと、人間の生きる上での根幹である、顔貌(審美面)および食べる、話すこと(機能面)の変化・低下を何度も目の当たりにし、同時に術後においてもそれらが著しく低下しQOLができないことから、新規低侵襲治療法の必要性を痛感しました。その後、縁あって大学院在学中に、東京大学医科学研究所にて、癌細胞でのみ増殖可能である、現在日本初のがん治療用ウイルス治療薬として2021年に承認を受けた、‛G47Δ’の口腔扁平上皮癌への応用についての研究に携わることができました。その中で、マウス口腔癌頚部リンパ節転移モデルを作成し、口腔癌の生存率やQOLの低下の大きな要因である頚部リンパ節転移に対して、ウイルスがリンパの流れに乗りリンパ節へ移行するという特性を利用して、原発巣および頚部リンパ節を非侵襲的に治療し得ることを報告しました。
 そして大阪大学歯学部附属病院におきまして、現在主に口腔癌・口腔潜在的悪性疾患の診断・治療に携わっている中で、超高齢化社会を反映したものの一部であると考えられる口腔多発癌・多発異型性病変、あるいは食道をはじめとする重複癌の患者が急増していることを肌で感じます。これらの治療は、高齢者が対象であることがほとんどであることだけでなく、表在性であっても手術のみで治療するには術侵襲が非常に大きいことからより包括的な治療が必要であると感じました。その中で、神戸大学生化学・分子生物学講座 分子細胞生物学分野・鈴木聡教授より供与いただいた、Mob1a,bDKOマウスが、これら全ての病態を反映し得るモデルであることから、本モデルを用いて、G47Δと同様の効果を持つT-01を用いて、投与方法の工夫を施す、あるいは他の分子標的薬との併用により治療効果の増強を図る検討を行うことと致しました。T-01は、外来遺伝子を組み込むことができ、従来本ウイルスが持つ免疫賦活化作用をより強力にしたIL-12発現型のT-mfIL-12を主に本実験に用いることにしております。
 本研究が、口腔多発癌や、重複癌といった難治性の病態の制御に寄与できればと強く思っております。
 改めまして本賞を授与していただき、心より御礼申し上げます。今後ともより一層研究に邁進する所存です。どうもありがとうございました。