難病Update

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コホート研究デンマーク子癇前症(妊娠高血圧腎症)血管性認知症認知症リスク

2019.01.26

子癇前症(妊娠高血圧腎症)と高齢期の認知症リスク:全国的コホート研究

Pre-eclampsia and risk of dementia later in life: nationwide cohort study

Basit S*, Wohlfahrt J, Boyd HA. *Department of Epidemiology Research, Statens Serum Institut, Copenhagen, Denmark. BMJ. 2018 Oct 17;363:k4109. doi: 10.1136/bmj.k4109. 子癇前症(最近は妊娠高血圧腎症に総称されている)と高齢期になってからの認知症の発症との関連性をデンマークの全国民を登録したデーターベースを使ったコホート研究により調査した。対象は、このデーターベースにおいて1978 - 2015年の間に少なくとも1回の生児出産又は死産を経験したすべての女性で、女性1,178,005例の経過観察20,352,695人年である。リスクの評価は、コックス回帰法を使い妊娠高血圧腎症の病歴を有する女性とそうでない女性における認知症を比較したハザード比を使っておこなった。子癇前症の病歴を有する女性は、高齢期における血管性認知症のリスクが3倍を上回った(ハザード比3.46、95%信頼区間1.97 - 6.10)。血管性認知症との関連性は、早発性疾患(ハザード比2.32、1.06 - 5.06)よりも、晩期発症型疾患(6.53、2.82 - 15.1)でより強かった(P=0.08)。糖尿病、高血圧及び心血管疾患などのリスクを調整するとハザード比は若干軽減した。また肥満指数(BMI)と血管性認知症との関連性は弱かった。子癇前症の病歴とアルツハイマー病(ハザード比1.45、1.05 - 1.99)やその他の認知症(1.40、1.08 - 1.83)との関連性は認められたが、血管性認知症との関連と比べると小さいものであった。 コメント 本論文のPre-eclampsiaは、「子癇前症」と訳されるが、周産期に異常な妊娠高血圧腎症の者に子癇の発生頻度が高いことから子癇前症の代わりに近年「妊娠高血圧腎症」の病名が使われている。本研究では、子癇前症(妊娠高血圧腎症)の既往歴を有する者において認知症、特に血管性認知症が他の発生リスクとは独立してリスクを高くしている可能性があることを指摘している。女性の認知症の早期診断や臨床介入につなげるために医師は妊娠高血圧腎症の既往歴を聞いておくことは大切であるとしている。 監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生 PudMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30333106

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