A型ボツリヌス神経毒素(BoNT/A)治療その他のジストニアドイツ中和抗体(NAb)保有率横断的観察研究痙縮眼瞼攣縮頸部ジストニア顔面片側攣縮
2019.02.26
長期のボツリヌス神経毒素治療後の高い中和抗体保有率
High prevalence of neutralizing antibodies after long-term botulinum neurotoxin therapy
Albrecht P*, Jansen A, Lee JI, Moll M, Ringelstein M, Rosenthal D, Bigalke H, Aktas O, Hartung HP, Hefter H
*From the Department of Neurology (P.A., A.J., J.-I.L., M.M., M.R., O.A., H.-P.H., H.H.), Medical Faculty, Heinrich Heine University Düsseldorf; and Toxogen GmbH (D.R., H.B.), Hannover, Germany phil.albrecht@gmail.com.
Neurology. 2019 Jan 1;92(1):e48-e54. doi: 10.1212/WNL.0000000000006688. Epub 2018 Nov 21.
さまざまな神経学的適応症においてA型ボツリヌス神経毒素(botulinum neurotoxin type A:BoNT/A)による長期治療中のBoNT/Aに対する中和抗体(neutralizing antibody:NAb)の保有率を調査する。この単施設での横断的観察研究では、さまざまな適応症に対してBoNT/A治療中の外来患者596例のBoNT/A結合抗体をELISA法で調べた。
NAb保有率をさまざまな適応症(顔面片側攣縮、眼瞼攣縮、頸部ジストニア、その他のジストニア、痙縮)について解析した。患者全体およびサブグループごとのNAb陽性率に加えて、治療期間に伴うNAb陰性維持確率のカプラン・マイヤー分析を示した。また、段階的な2項ロジスティック回帰分析を行ってNAbの誘導に有意に寄与する因子を特定した。
合計596例中83例(13.9%)でNAbが測定可能であった。NAbが発現する確率は治療の1回投与量と累積投与量に応じて上昇し、BoNT/Aの製剤による影響を受けていた。しかし、このほかに分析した因子は、適応症や治療期間を含めてすべて、追加の影響を及ぼしていなかった。
コメント
顔面片側痙攣や頸部ジストニア、脳血管障害後遺症の痙縮などに、A型ボツリヌス神経毒素(商品名;ボトックス)は頻用されている。ボツリヌスA型菌の毒素から作られており、神経筋のブロックにより症状を改善させる。数か月に1回の治療を要するが、効果例も多く、患者にとっては有用な治療法の一つである。以前より、頻回に使用しているうちに中和抗体ができて効果がなくなることが指摘されていた。最近では、蛋白含有量の減少により中和抗体出現率は減ったようであるが、本論文は、BoNT/Aの反復投与には当然NAb発現のリスクが伴うことを、今までで最大規模の研究で提示したものである。そして、追加の注射を避けて注射の間隔を少し空けるほか1回の治療で注射する用量を減らすことにより、いずれの適応症に対してBoNT/Aを使用したかに関係なく、NAb誘発リスクが低下する可能性があることを示した。使用方法を明確に指摘したものであり、今後のボトックス療法上、参考になると考え取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30464031