Geevasinga N*, Howells J, Menon P, van den Bos M, Shibuya K, Matamala JM, Park SB, Byth K, Kiernan MC, Vucic S.
*From Westmead Clinical School (N.G., P.M., M.v.d.B., S.V.), Brain and Mind Center (J.H., K.S., J.M.M., S.B.P., M.C.K.), and NHMRC Clinical Trials Centre (K.B.), University of Sydney; and Westmead Hospital (K.B.), Research and Education Network, Sydney, Australia.
Neurology. 2019 Feb 5;92(6):e536-e547. doi: 10.1212/WNL.0000000000006876. Epub 2019 Jan 11.
この研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の新たな診断指標(diagnostic index:ALSDI)の実用性を評価することであった。ALS疑い患者を対象としてプロスペクティブな多施設共同研究を行った。組入時にすべての患者に参照標準(Awaji基準)を適用した。患者は、トレーニングコホート(75%)またはテストコホート(25%)に無作為に割り付けた。トレーニングコホートでALSDIの開発を行った後に、テストコホートでその診断の実用性を評価した。
合計407例が組み入れられた。その後、305例がALSと診断され、102例がALSではなく類似疾患と診断された。トレーニングコホートにおいてALSDIは神経筋疾患からALSを確実に鑑別し、テストコホートにおいてALSDIの診断の実用性が確認され(曲線下面積0.90、95%信頼区間0.84 - 0.97)、ALSDI≧4では感度83.3%、特異度84%、診断確度83.5%であった。さらに、組入時にAwaji基準を満たさなかった患者および下位運動ニューロン優位の表現型を示す患者でもALSDIの診断の実用性が確認された。
コメント
ALSはその後の人生を大きく変える疾患の一つである。早期診断は、早期治療開始を可能にすること、疾病受容への心の準備期間の獲得などで重要なことである。現在世界的に利用されている診断基準は、2008年に出されたAwaji基準であり有用性は高い。しかし、疾患の多様性により、特に下位運動神経が優位に障害されている症例の診断は困難なことも多い。
本報告は、ALSDIという新たな診断指標の開発と、実臨床で検証した結果を報告したものである。下位運動ニューロンや上位運動ニューロンの評価項目に、末梢神経誘発電位のM波の振幅やTMS(Transcranial Magnetic Stimulation。経頭蓋磁気刺激)におけるcortical silent periodなどの指標を含め、それぞれの点数化した数値で診断したものである。Awaji陰性例も高率に陽性を示しており、若干煩雑であること、エビデンスはクラスIであるが、早期ALS疑い患者において、ALSDIはALSを類似する神経筋疾患と鑑別が可能であり、重要な報告と考え取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30709964