バイオマーカー中脳水道周囲灰白質(PAG)鉄沈着慢性片頭痛臨床研究赤核(red nucleus:RN)鉄沈着
2019.04.26
中脳水道周囲灰白質への鉄沈着が慢性片頭痛のバイオマーカーとなる可能性
Iron deposition in periaqueductal gray matter as a potential biomarker for chronic migraine
Domínguez C*, López A, Ramos-Cabrer P, Vieites-Prado A, Pérez-Mato M, Villalba C, Sobrino T, Rodriguez-Osorio X, Campos F, Castillo J, Leira R.
*From the Departments of Neurology (C.D., A.L., X.R.-O., R.L.) and Radiology (C.V.), Hospital Clinico Universitario, Universidade de Santiago de Compostela; Clinical Neurosciences Research Laboratory (A.V.-P., M.P.-M., T.S., F.C., J.C., R.L.), Health Research Institute of Santiago de Compostela; Magnetic Resonance Imaging (P.R.-C.), Molecular Imaging Unit, CIC biomaGUNE, Donostia-San Sebastian; and Ikerbasque (P.R.-C.), The Basque Foundation for Science, Bilbao, Spain.
Neurology. 2019 Mar 5;92(10):e1076-e1085. doi: 10.1212/WNL.0000000000007047. Epub 2019 Feb 1.
赤核(red nucleus:RN)、淡蒼球(globus pallidus:GP)、および中脳水道周囲灰白質(periaqueductal gray matter:PAG)における鉄沈着、ならびに片頭痛(chronic migraine:CM)の病態生理にかかわるバイオマーカー濃度との関連性を調査すること。片頭痛患者112例(CM 55例、反復性片頭痛[episodic migraine:EM]57例)と頭痛のない対照者25例。鉄沈着を3T MRIおよびNIHのソフトウェアプラットホームImageJにより解析し、発作間欠期の炎症、内皮機能障害、および血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)破綻に関するマーカーの血清濃度をELISA法により分析した。
CM患者は、PAGにおける鉄沈着量もEM患者(360.3±6.5 vs 249.7±6.9μL、P<0.001)および対照者(360.3±6.5 vs 168.6±10.3μL、P<0.001)と比較して多かった。受信者動作特性曲線から、鉄量の至適閾値は、RNにおいて15μL(感度80%、特異度71%)、PAGにおいて240μL(感度93%、特異度97%)であった。PAGにおける鉄沈着量は、可溶性腫瘍壊死因子様WEAK(r=0.395、P=0.005)および細胞フィブロネクチン(r=0.294、P=0.040)の血漿中濃度が高いことと相関していた。
コメント
以前から、片頭痛患者では、中脳水道周囲灰白質の鉄沈着の高いことが指摘され、そのことにより中脳水道周囲灰白質の基質変化がおこり,下行性疼痛抑制系の機能障害を生じているとの仮説が提唱されている。本報告では、CM患者では、EM患者および対照者と比較してRNおよびPAGの鉄沈着が多いこと、さらにPAGにおける鉄沈着量はCM患者を正確に同定するものであり、内皮機能障害およびBBB破綻に関するバイオマーカーの上昇と関連していたことを指摘した。慢性型への移行機序を考える上で示唆に富むこと及び、慢性型と薬剤誘発型との鑑別診断にも役立つ報告と考えられ、興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先
PudMed:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30709968