難病Update

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入院期間医療機関集約化後ろ向き調査急性脳卒中死亡率治療成績英国

2019.04.26

英国の大都市圏における急性脳卒中治療機関の集約化の効果とその持続性の検証:医療機関患者登録及び脳卒中全国登録データを使った後ろ向き調査から

Impact and sustainability of centralising acute stroke services in English metropolitan areas: retrospective analysis of hospital episode statistics and stroke national audit data

Morris S*, Ramsay AIG, Boaden RJ, Hunter RM, McKevitt C, Paley L, Perry C, Rudd AG, Turner SJ, Tyrrell PJ, Wolfe CDA, Fulop NJ *Epidemiology and Public Health Group, University of Exeter Medical School, RD&E Wonford, Exeter EX2 5DW, UK. BMJ. 2019 Jan 23;364:l1. doi: 10.1136/bmj.l1. 2015年のマンチェスター大都市圏域の急性脳卒中医療機関の集約化がなされた。ロンドンではすでに2010年に医療機関の集約化が行われており、その効果が持続しているかどうかを検証した。本研究で用いたデータは、死亡者データを含む入院患者登録(Hospital Episode Statistics、以下HES)、及び全国脳卒中患者登録(SSNAP)からのものである。対象は、HESの2008年1月から2016年3月に入院した脳卒中患者509,182例、及びSSNAPの2013年4月から2016年3月の登録入院脳卒中患者218,120例とした。評価は後ろ向き調査で行った。入院後90日時点の死亡率、入院期間、治療成績などにより評価した。マンチェスター大都市圏でも急性脳卒中患者の治療の集約化により入院後90日時点の死亡率の低下が示された。超急性期脳卒中治療室(hyperacute stroke units :以下HASUs)で治療された患者の死亡率は有意に低下していた[-1.8%(95%CI:-3.4 - -0.2)]。1年当たり死亡者が69例減少し、入院期間も有意に低下した[-1.5日(95%CI:-2.5 - -0.4)]。年間入院日数減少は約6,750日であった。HASUsで治療される脳卒中患者割合は2010から2012年の39%が2015/16年には86%に増加していた。ロンドンでは90%以上の患者がHASUsで治療を受けるようになり入院後90日時点の死亡率低下や入院期間の短縮は持続していることが確認された。 コメント 脳卒中は早期に対応すると「治らぬ病気」から「治る病気」となる。そのためには高度な急性期の治療体制の整備が不可欠である。2010年にロンドンでは8つの医療機関のHASUsに脳卒中患者の治療が集約化されている(hub-and-spokeモデル)。本論文はマンチェスター大都市圏で医療の集約化を図った結果をみたものである。日本では、SCU(stroke care unit)を有する施設整備がなされているが、大都市圏を単位とした高度な集約的な医療体制の整備には到っていない。日本でも脳卒中を治る病気とする体制づくりが求められる。 監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生 PudMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30674465

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