難病Update

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TGFβシグナルの伝達YAPチロシンホスファターゼPTPN14線維芽細胞様滑膜細胞(RA-FLS)関節リウマチ(RA)

2019.04.26

PTPN14ホスファターゼおよびYAPはリウマチの滑膜細胞におけるTGFβシグナルの伝達を促進する

PTPN14 phosphatase and YAP promote TGFβ signalling in rheumatoid synoviocytes

Bottini A*,Wu DJ, Ai R, Le Roux M, Bartok B, Bombardieri M, Doody KM, Zhang V, Sacchetti C, Zoccheddu M, Lonic A, Li X, Boyle DL, Hammaker D, Meng TC, Liu L, Corr M, Stanford SM, Lewis M, Wang W, Firestein GS, Khew-Goodall Y, Pitzalis C, Bottini N *Dept. of Medicine, University of California San Diego, La Jolla, California, USA Ann Rheum Dis. 2019 Feb 26. pii: annrheumdis-2018-213799. doi: 10.1136/annrheumdis-2018-213799 チロシンホスファターゼPTPN14は癌細胞ではYAPを細胞質基質に保持することによってHippo経路を調節しているが、本試験では関節リウマチ患者由来の線維芽細胞様滑膜細胞(RA-FLS)でのその役割を調査した。定量PCRおよびウェスタンブロット法によりRA-FLSにおける遺伝子とタンパク質の発現量を測定したところ、変形性関節症患者由来の線維芽細胞様滑膜細胞(OA-FLS)と比べてPTPN14の過剰発現が認められた。RA-FLSでは、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるPTPN14のノックダウンによって、TGFβ依存性のMMP13の発現およびTNFシグナル伝達の活性が抑制された。免疫沈降法では、RA-FLSにおけるPTPN14とYAPとの複合体の形成が確認された。HEK293T細胞を用いたSMADのレポーターアッセイでは、PTPN14または核内のYAPの発現によるSMADのレポーターの活性化が認められた。YAPはRA-FLSにおけるTGFβ依存性のSMADの核内局在を促進した。RA-FLSとOA-FLSの間には、YAPなどのHippo経路遺伝子の転写後活性の相違がみられた。さらにin vivo試験では、YAPの阻害によるRA-FLSの病態機序の抑制および関節炎の重症度の緩和が観察された。PTPN14及びYAPはRA-FLSにおけるSMAD3の核内局在を促進する。YAPはRA-FLSにおけるさまざまな発病機序を促進しており、転写後活性と考え合わせると、Hippo経路がRA-FLSの機序の重要な調節因子であることが示唆される。 コメント 細胞活性にはリン酸化と脱リン酸化機序があるが、前者はよく解析されている。このたびPTPN14を指標として脱リン酸化機序を解析したもので、興味深い。リウマチ滑膜細胞ではPTPN14の過剰発現があり、その結果リウマチによる活動性の調節が行われていることが、明らかとなった。それも核内にあるYAPと結合してSMADの核内局在を促進して、活動性の抑制を調節していることを示し、有要な研究である。 監訳・コメント:大阪大学 産業科学研究所 吉崎 和幸先生 PudMed:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30808624

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