難病Update

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人種差(アフリカ系米国人、非ヒスパニック系白人)後ろ向き症例対照研究気管切開下侵襲的換気療法(TIV)生存期間

2019.06.26

ALS患者における治療介入の割合の人種差:1件の症例対照研究

Racial differences in intervention rates in individuals with ALS: A case-control study

Qadri S*, Langefeld, Milligan, Caress, Cartwright MS. *From the Department of Neurosciences, Health Disparities in Neuroscience-related Disorders Program (S.Q., C.M.), and Departments of Biostatistics and Data Science (C.D.L.) and Neurology (J.B.C., M.S.C.), Wake Forest School of Medicine, Winston-Salem, NC. Neurology. 2019 Apr 23;92(17):e1969-e1974. doi: 10.1212/WNL.0000000000007366. アフリカ系米国人の筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)患者の寿命が非ヒスパニック系白人と比較して長いのはアフリカ系米国人において気管切開下侵襲的換気療法(tracheostomy and invasive ventilation:TIV)の割合が高いことによる二次的な結果であるかどうかを明らかにするため、この研究を行った。アフリカ系米国人のALS患者49例を年齢、性、発症部位で白人のALS患者137例とマッチさせたレトロスペクティブな症例対照研究を行った。 転帰を死亡とした場合にアフリカ系米国人は白人よりも生存期間が長かったが(P=0.016)、転帰を死亡またはTIVとした場合は有意ではなかった(P=0.100)。また、アフリカ系米国人では白人と比較して非侵襲的換気療法の割合が低く(27[55%] vs 96[70%]、P=0.015)、TIVの割合が高かった(8[16%] vs 7[5%]、P=0.016)。 コメント 以前から、米国人世界は、言葉や文字を通しての契約社会であり、ALSで言葉を失った場合は、人生は終わりと考え、TIVの割合が少ないのではないかと、私は考えていた。本論文は、アフリカ系米国人のALS患者は白人のALS患者よりも長く生存し、これは、アフリカ系米国人はTIVの割合が高く、そのための二次的な結果である可能性を示唆する報告であった。私の考えていた通りの結果であり、人工呼吸器装着、非装着は多分に哲学的や宗教的な関与が考えられるが、日本人でも人工呼吸器装着率は30%弱と低率である。人間の生き方に対する考え方の多様性は計り知れないことを示唆させる論文であり、医学的以外の文化的興味もあり取り上げた。 監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生 PudMed:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30918092

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