難病Update

難病Update

c.281C>Tp.S94LTRPV4遺伝子ホモ接合型変異先天性脊髄性筋萎縮症・関節拘縮症(CSMAA)全エクソーム解析(WES)臨床研究

2019.07.26

TRPV4遺伝子のホモ接合型変異が先天性、遠位型の脊髄性筋萎縮症・関節拘縮症の原因となる

Homozygous TRPV4 mutation causes congenital distal spinal muscular atrophy and arthrogryposis

Velilla J1, Marchetti MM, Toth-Petroczy A, Grosgogeat C, Bennett AH, Carmichael N, Estrella E, Darras BT, Frank NY, Krier J, Gaudet R, Gupta VA.

1Department of Molecular and Cellular Biology (J.V., R.G.), Harvard University, Cambridge; Division of Genetics (M.M.M., A.T.-P., C.G., A.H.B., N.C., B.T.D., N.Y.F., J.K., V.A.G.), Brigham Genomic Medicine, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston; Division of Genetics (E.E.), Boston Children's Hospital; and Division of Neurology (B.T.D.), Boston Children's Hospital, Harvard Medical School, MA.

Neurol Genet. 2019 Mar 7;5(2):e312. doi: 10.1212/NXG.0000000000000312. eCollection 2019 Apr.

先天性の脊髄性筋萎縮症・関節拘縮症(congenital spinal muscular atrophy and arthrogryposis:CSMAA)を呈する疾患の遺伝的原因を同定すること。2歳の男児が先天性多発性関節拘縮症、重度の骨格異常、斜頸、声帯麻痺、および下肢の運動低下と診断された。この発端症例とその家族の全エクソーム解析(whole exome sequencing:WES)を行った。蛋白質の構造のin silicoモデリングならびに異種蛋白質発現と細胞毒性に関する試験を行い、同定された変異体の病原性を確認した。
WESにより、TRPV4遺伝子のホモ接合型変異(c.281C>T、p.S94L)が明らかになった。TRPV4の劣性変異が同定された。In silico構造的モデリングから、p.S94L変異は障害されたN末端領域のホスホイノシチドおよびPACSIN3と結合する重要な調節領域の近くにあり、そのため輸送やチャネル感度が変化しうることが示唆される。ウエスタンブロット法と免疫組織化学解析による機能的研究では、p.S94LがTRPV4活性に基づく細胞毒性を増強し、その結果TRPV4の発現量が低下することから、p.S94Lには機能獲得機序が関与していることが示されている。

コメント
運動神経系を系統的に障害する疾病群は、運動神経疾患と呼ばれている。上位ニューロン、下位ニューロン両者が障害される代表疾患が筋萎縮性側索硬化症であり、下位ニューロン、すなわち脊髄が障害の中心になるのが、脊髄性筋萎縮症(SMA)である。主にI - IV型があり、最近SMN I型に対する遺伝子治療が、高額なことで話題になった。本論文はその亜型の報告であり、劣性遺伝形式をとるCSMAAの原因として、TRPV4の新たなホモ接合型変異を同定したものである。詳細な臨床像の報告とともに、劣性遺伝で遺伝子が判明した点、今後の治療方法開発につながることが期待される点など、興味ある論文であり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed:

一覧へ