難病Update

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スウェーデン前向きコホート研究家族性因子慢性腎臓病(CKD)発症リスク早産児

2019.07.26

早産児の小児期から中年期における慢性腎臓病の発症リスク-全国コホートによる検討-

Preterm birth and risk of chronic kidney disease from childhood into mid-adulthood: national cohort study

Crump C1, Sundquist J, Winkleby MA, Sundquist K

1Icahn School of Medicine at Mount Sinai, Departments of Family Medicine and Community Health and of Population Health Science and Policy, One Gustave L Levy Place, Box 1077, New York, NY 10029, USA casey.crump@mssm.edu.

BMJ. 2019 May 1;365:l1346. doi: 10.1136/bmj.l1346.

早産(在胎齢37週未満)児の、中年期までの慢性腎臓病(以下、CKDと略す)の発症リスクについて、スウェーデンの1973-2014年の間に生まれた単生児出産児4,186,615例のコホートの追跡調査により検討した。CKD(最高年齢43歳)患者の把握は、2015年までの全国規模の入院及び外来患者の診療記録データを使った。解析は、交絡因子を調整してコックス回帰法を用いた。家族性因子(遺伝性又は環境性)の検討も行った。観察人年8,700万の中で4,305例(0.1%)のCKDと診断された者がいた。CKDのリスクは、早産児では約2倍(HR1.94、95%CI:1.74-2.16)、超早産児(28週未満)では約3倍(3.01、1.67 - 5.45)であった。「37 - 38週」出生児で有意に発症リスクが高かった(1.30、1.20 - 1.40)。早産とCKDとの関連は、0 - 9歳で最も高く(5.09、4.11 - 6.31)、次いで10 - 19歳(1.97、1.57 - 2.49)及び20 - 43歳(1.34、1.15 - 1.57)で、年齢が上がるとHRは小さかった。男女両方でも同様であった。遺伝性又は環境性の共通因子との関連は認めなかった。

コメント
遺伝子(内的要因)で明確に決定されている病気が明らかになっている。しかし、早産などの外的要因が疾病の発生リスクに影響があることも知られている。本研究は、早産児では、若年期のCKDの発症リスクが2倍以上高いことを示している。ただし、早産に到った母親の経済事情などの社会的要因がCKDに影響して、見かけ上リスクが高くなっている可能性も考えられる。その点の検討も必要であるように思う。しかし、本研究から、早産児については腎機能の検査を行い、CKDの早期発見に努める必要がある。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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