難病Update

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アルツハイマー病コホート研究

2019.08.06

血漿中のアルツハイマー病関連βアミロイドの完全自動分析を使ったスクリーニング検査の有効性評価

Performance of Fully Automated Plasma Assays as Screening Tests for Alzheimer Disease-Related β-Amyloid Status

Palmqvist S1, Janelidze S, Stomrud E, Zetterberg H, Karl J, Zink K, Bittner T, Mattsson N, Eichenlaub U, Blennow K, Hansson O

1Clinical Memory Research Unit, Department of Clinical Sciences, Lund University, Lund, Sweden.

JAMA Neurol. 2019 Jun 24. doi: 10.1001/jamaneurol.2019.1632.

 血漿中のβアミロイド(Aβ)及びタウの測定により、プライマリケアの場においてアルツハイマー病(以下ADと略す)のスクリーニングが可能か検討した。コホート1として、スウェーデンのBioFINDER研究コホートの842例[(認知機能障害なし(CU)513例、軽度認知機能障害(MCI)265例、AD型認知症64例]を使った。コホート2として、ドイツのバイオマーカーコホートから237例(CU34例、MCI109例、AD型認知症94例)を使った。コホート1は2009年7月6日 - 2015年2月11日に登録された者(年齢中央値72歳、女性52.5%)であった。コホート2は、2000年1月29日 - 2006年10月11日に登録された者(年齢中央値66歳、女性50.6%)であった。評価は2018年時点で行った。脳脊髄液(CSF)のAβ42/Aβ40比を評価指標とした。血漿中のAβ42、Aβ40、及びタウはElecsys免疫法で測定した。脳髄液のAβの予測は、血漿中のアミロイド関連物質を変数としてロジスティック回帰モデルを使って検討した。コホート1の対象者については、血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)と重鎖(NFH)およびアポE遺伝子型を測定して予測精度をみた。血漿のAβ42とAβ40を使って脳髄液のAβ状態との予測精度はROC曲線下面積(以下AUCと略す)を計算して評価した。AUCは0.80(95%CI:0.77 - 0.83)であった。アポEを加えるとAUCは0.85(0.82 - 0.88)に有意に高くなった。血漿中のAβ42とAβ40にE遺伝子型とタウを加えるとAUCは0.86(0.83 - 0.88)であった。さらにタウ及びNFLを加えると0.87(0.84 - 0.89)となった。タウの影響は乏しかった。認知症のレベル、若年と高齢の年齢層でも同じ傾向であった。コホート2で同様の確認ではAUCは0.86(0.81 - 0.91)で変わりはなかった。本研究の結果、ADのスクリーニングとして血漿中のAβ42、Aβ40およびアポEを測定することで予測できることがわかった。

コメント
 血漿中のAβ42及びAβ40の測定によりすべての段階のADの脳髄液内のAβ状況がAUCで0.8-0.9の精度で予測できることが示された。アポE遺伝子型を加えるとさらにAUCが高まった。血液検査はプライマリケアの段階で利用可能である。これまでADの疑いの人を診断するためにPET検査や腰椎穿刺を行ってきたが、血液検査を予備的に使うことで検査回数や検査費用をかなり減らすことができる。ADのスクリーニングが初期診療の場で血液検査を使ってできれば早期発見と早期支援につながると期待される。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed:
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