難病Update

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コホート研究パーキンソン病進行性核上性麻痺(PSP)

2019.09.06

進行性核上性麻痺における経頭蓋刺激による言語能力強化

Language boosting by transcranial stimulation in progressive supranuclear palsy

Valero-Cabré A1, Sanches C, Godard J, Fracchia O, Dubois B, Levy R, Truong DQ, Bikson M, Teichmann M.

1From Groupe de Dynamiques Cérébrales, Plasticité et Rééducation (A.V.-C., C.S., J.G., O.F.) and Frontlab Team (A.V.-C., C.S., J.G., O.F., B.D., R.L., M.T.), Institut du Cerveau et de la Moelle Epinière (ICM), INSERM 1127, CNRS, UMR 7225 and Sorbonne Université (SO), Paris, France; Laboratory for Cerebral Dynamics Plasticity and Rehabilitation (A.V.-C.), Boston University School of Medicine, MA; Cognitive Neuroscience and Information Technology Research Program (A.V.-C.), Open University of Catalonia (UOC), Barcelona, Spain; Department of Neurology (B.D., R.L., M.T.), National Reference Center for "PPA and Rare Dementias," Pitié Salpêtrière Hospital, AP-HP, Paris, France; and Neural Engineering Laboratory, Department of Biomedical Engineering (D.Q.T., M.B.), the City College of City University of New York, NY. marc.teichmann@psl.aphp.fr antoni.valerocabre@icm-institute.org.

Neurology. 2019 Aug 6;93(6):e537-e547. doi: 10.1212/WNL.0000000000007893. Epub 2019 Jul 3.

 背外側前頭前皮質(dorsolateral prefrontal cortex:DLPFC)への経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)により進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)患者の言語能力が改善するかどうかを探索する。シャム対照、二重盲検、クロスオーバーデザインを用いて、PSP患者12例から成るコホートでDLPFCへのtDCSの効率を評価した。3つの別々のセッションにおいて、左陽極(興奮性)tDCS、右陰極(抑制性)tDCS、これらと比較するためのシャムtDCSを行い、左DLPFCを強化する力を評価した。tDCSセッションの直前と直後に語彙へのアクセスを評価する課題(文字流暢性課題)と意味へのアクセスを評価する課題(カテゴリー判断課題)を行い、潜在的言語調節の指標を得た。
PSP患者ではベースラインにおいていずれの課題でも障害が認められることが示された。刺激後と刺激前の成績をtDCSの条件で対比すると、カテゴリー判断課題では右陰極tDCS後、文字流暢性課題では左陽極tDCS後の言語能力の改善が明らかとなった。コンピューターによる電流分布の有限要素モデルにより、標的としたDLPFCに対する左陽極tDCSと右陰極tDCSの意図した効果が確認された。この研究から、PSP患者においてDLPFCへのtDCSによりいくつかの言語課題の成績が改善するというクラスIIIのエビデンスが得られた。

コメント
 PSPは、パーキンソン病を代表とするパーキンソン症候群の中心的な疾患であるが、純粋無動症や大脳皮質基底核変症と類似な症状を呈するなど、表現型は多様性を示す。パーキンソン病に比較し、生命予後は悪く、特に意思疎通で重要な発語障害は、この疾患のQOLを下げ、患者自身も最も辛い症状の一つである。本論文で、PSPにおけるtDCS誘発性の言語能力改善が示され、PSPにtDCSを用いるという概念を実証するものである。さらに、この治療法により、神経可塑性により促進された治療効果が、より長く持続する可能性が示唆された。患者には朗報であり、臨床応用が進むことを期待し、取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed:
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