難病Update

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IgG4関連疾患ゲノム解析コホート研究

2019.10.06

日本人を対象とした全ゲノム解析によるIgG4関連疾患の関連遺伝子に関する研究

IgG4-related disease in the Japanese population: a genome-wide association study

Chikashi Terao1, Masao Ota, Takeshi Iwasaki, Masahiro Shiokawa, Shuji Kawaguchi, Katsutoshi Kuriyama, Takahisa Kawaguchi, Yuzo Kodama, Izumi Yamaguchi, Kazushige Uchida, Koichiro Higasa, Motohisa Yamamoto, Kensuke Kubota, Shujiro Yazumi, Kenji Hirano, Yasufumi Masaki, Hiroyuki Maguchi, Tomoki Origuchi, Shoko Matsui, Takahiro Nakazawa, Hideyuki Shiomi, Terumi Kamisawa, Osamu Hasebe, Eisuke Iwasaki, Kazuo Inui, Yoshiya Tanaka, Koh-ichi Ohshima, Takashi Akamizu, Shigeo Nakamura, Seiji Nakamura, Takako Saeki, Hisanori Umehara, Tooru Shimosegawa, Nobumasa Mizuno, Mitsuhiro Kawano, Atsushi Azumi, Hiroki Takahashi, Tsuneyo Mimori, Yoichiro Kamatani, Kazuichi Okazaki, Tsutomu Chiba, Shigeyuki Kawa, Fumihiko Matsuda

1on behalf of the Japanese IgG4-Related Disease Working Consortium

Lancet Rheumatol 2019; 1: e14-22, Published: August 6, 2019, S2665-9913(19)30006-2

  IgG4関連疾患とは、自己免疫性膵炎、IgG4関連唾液腺炎及びIgG4関連腎疾患を含む免疫病理組織学的な疾患概念である。日本の研究・医療機関50施設におけるIgG4関連疾患患者857例を症例群とし、一般住民を対象とした「ながはまコホート(Comprehensive Human Bioscience)」の2,082例を対照群としてDNA検体を解析した。その中の2008年10月27日から2014年7月22日までの間の国際診断基準に合致した835例の患者と、1,789例の対照群のDNAデータを分析対象とした。症例群と対照群について958,440か所のゲノム分布の一塩基の変異部位を比較した。HLA領域、FCGR2B領域については広範囲に、詳細に解析し、比較した。HLA-DRB1(P=1.1×10-11)及びFCGR2B(P=2.0×10-8)の領域がIgG4関連疾患の感受性遺伝子座であると同定された。また、HLA-DRB1のβドメインの7番目のアミノ酸残基がIgG4関連疾患と最も強い関連があった(P=1.7×10-14)。FCGR2B領域のrs1340976は、FCGR2B領域の遺伝子発現(P=2.7×10-10)と強い関連があった。IgG4関連疾患では、全身性エリテマトーデスに関連するFCGR2B領域のrs1050501と弱い連鎖不均衡の関係にあった。また、FCGR2B領域のrs1340976は、IgG4関連疾患の診断時の腫脹臓器数(P=0.011)とIgG4濃度(P=0.035)との関連を認めた。

コメント
 本研究では、HLA-DRB1遺伝子とFCGR2B遺伝子がIgG4関連疾患に関連している遺伝子であることを明らかにしている。しかし、まだこの2つの遺伝子と疾患発症、病態や重症度との関連はわからない。IgG4関連疾患(IgG4-RD)は日本で提唱された疾患概念であり、2015年度に免疫系の希少難病として指定されているが、まだ正確な患者数や病態についてはわからない点が多い。全ゲノム塩基配列解析が容易に行えるようになったことから、患者の登録を進め、追跡調査をして疾患の自然史・病態・予後との関連を明らかにし、治療法を開発につなげていく必要がある。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed:
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