難病Update

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パーキンソン病進行性核上性麻痺(PSP)

2019.11.04

進行性核上性麻痺は神経原性起立性低血圧と関連しない

Progressive supranuclear palsy is not associated with neurogenic orthostatic hypotension

van Gerpen JA1, Al-Shaikh RH1, Tipton PW1, Wszolek ZK1, Uitti RJ1, Ferman TJ1, Dickson DW1, Benarroch EE1, Singer W1, Cutsforth-Gregory JK1, Heckman MG1, Brushaber DE1, Josephs KA1, Low PA1, Ahlskog JE1, Cheshire WP.

1From the Departments of Neurology (J.A.v.G., R.H.A.-S., P.W.T., Z.K.W., R.J.U., W.P.C.), Psychiatry and Psychology (T.J.F.), and Neuroscience (D.W.D.) and Division of Biomedical Statistics and Informatics (M.G.H.), Mayo Clinic, Jacksonville, FL; and Department of Neurology (E.E.B., W.S., J.K.C.-G., K.A.J., P.A.L., J.E.A.) and Division of Biomedical Statistics and Informatics (D.E.B.), Mayo Clinic, Rochester, MN.

Neurology. 2019 Oct 1;93(14):e1339-e1347. doi: 10.1212/WNL.0000000000008197. Epub 2019 Sep 4.

 剖検で確認された進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)における、自律神経機能異常のパターンと重症度をαシヌクレイン病理と比較して評価する。生前に自律神経検査を受けており、剖検で確認された、PSP患者14例、多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)患者18例、レビー小体病(Lewy body disease:LBD)患者24例についてレトロスペクティブレビューを行った。
 起立性低血圧(orthostatic hypotension:OH)がないことが、PSPをαシヌクレイン病と区別する有力な自律神経パラメータであった(0% vs 69%、P<0.0001)。神経原性OHを区別する、アドレナリン作動性機能障害に関する検査でも、PSPが他の疾患群と鑑別された。このような結果が得られた検査項目は、血圧回復時間(P=0.0008)、アドレナリン作動性機能障害スコア(P=0.001)、ヘッドアップティルトでの収縮期血圧(P=0.0002)と拡張期血圧(P=0.0001)の変化の大きさなどであった。これらの結果は、PSPの臨床的特徴に対する理解を深めるものである。

コメント
 グリア細胞におけるタウ蛋白異常で惹起されると考えられているPSPの初期診断は困難なことが多い。特徴とされる頭部の後屈ジストニアや眼球運動の下方制限などは、ある程度進行しなければ、出現しない。しかし、同じパーキンソン症候群で、シヌクレイノパチーであるパーキンソン病との初期での鑑別は重要である。その理由の一つは、PSPは初期に、ある程度L-dopaが有効であるため、つい増量し副作用による病状の進行を早めることが多いことなどである。今回の報告で、起立性低血圧がないことが、PSPをαシヌクレイン病と区別する有力な自律神経パラメータであるという、PSPの臨床的特徴に対する理解を深めるものであった。最も困難であるパーキンソン病との鑑別を早期にし得ることを示唆していること、さらに、非典型的PSPの臨床分類における再考の必要性をも示唆する重要な報告と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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