難病Update

難病Update

コホート研究シェーグレン症候群

2019.11.04

一次性シェーグレン症候群患者集団の症状をもとにした層化による治療効果の評価:国際的コホート及び治験のデータの利活用による

Symptom-based stratification of patients with primary Sjögren’s syndrome: multi-dimensional characterisation of international observational cohorts and reanalyses of randomised clinical trials

Jessica R Tarn1, Nadia Howard-Tripp, Dennis W Lendrem, Xavier Mariette, Alain Saraux, Valerie Devauchelle-Pensec, Raphaele Seror, Andrew J Skelton, Katherine James, Peter McMeekin, Shereen Al-Ali, Katie L Hackett, B Clare Lendrem, Ben Hargreaves, John Casement, Sheryl Mitchell, Simon J Bowman, Elizabeth Price, Colin T Pease, Paul Emery, Peter Lanyon, John Hunter, Monica Gupta, Michele Bombardieri, Nurhan Sutcliffe, Costantino Pitzalis, John McLaren, Annie Cooper, Marian Regan, Ian Giles, David Isenberg, Vadivelu Saravanan, David Coady, Bhaskar Dasgupta, Neil McHugh, Steven Young-Min, Robert Moots, Nagui Gendi, Mohammed Akil, Bridget Griffiths , Svein J A Johnsen, Katrine B Norheim, Roald Omdal, Deborah Stocken, Colin Everett, Catherine Fernandez on behalf of Leeds CTRU, John D Isaacs, Jacques-Eric Gottenberg on behalf of the French ASSESS cohort, Wan-Fai Ng on behalf of the UK Primary Sjögren’s Syndrome Registry

1Leeds CTRU

Lancet Rheumatol 2019; 1: e85-94. DOI:https://doi.org/10.1016/S2665-9913(19)30042-6

 一次性シェーグレン症候群患者は、均一性が乏しく、しかも頻度が少ない疾患である。そのため有効な治療法の開発やその効果の評価を行うことが難しい。本研究は、英国の一次性シェーグレン症候群患者登録(UKPSSR)されていた608人について、5つの症状(疼痛、疲労、乾燥、不安及びうつ病)をもとに「低症状群(LSB)」、「高症状群(HSB)」、「乾燥症状優位群(DDF)」、「疼痛症状優位群(PDF)」の4つに患者集団を分類し、この分類群について、血清IgG、κ遊離軽鎖、β2ミクログロブリン及びCXCL13の値、末梢血リンパ球数、抗SSAと抗SSBの抗体陽性率を検討したところ各群間で末梢血のトランスクリプトミクス・モジュールの特異的な発現に違いを認めた。これをノルウェー及びフランスの2つの独立したコホート(n=396)のデータを使って再分析したところ同様の結果であった。そこで、この層化分類した患者群について、二重盲検法で行われた治療薬剤の第3相の治験研究のデータを使って患者群間の薬剤の反応性をみた。その結果、ヒドロキシクロロキンはHSB群に、リツキシマブは「DDF群」に、特に効果が高いことが確認された。

コメント
 2015年1月20日の米国オバマ大統領が一般教書演説において米国医療制度改革の一環として「Precision Medicine」を進めると打ち出した。これは、従来の臨床医学では患者を一つの集団として治療研究を進めてきたことを改めさせ、患者集団を細かく特徴別に分類し、治療することを推奨したものである。本研究は、一次性シェーグレン症候群を対象としたPrecision Medicineの観点の研究と思われる。患者集団を細かく分類することにより無効で不要な治療をしなくて済むことになる。本研究でも特定の薬剤の有効性が患者のサブグループ間で異なることが示された。シェーグレン症候群以外の免疫疾患の難病患者に対する治療法の確立にもこのアプローチを推奨している。米国ではじまったPrecision Medicineが世界的な臨床医学の方向性として拡がっていることが確認できた。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed:
[Click here to view Pubmed article]

一覧へ