Yang Y1, Halliday GM, Kiernan MC, Tan RH
1From the University of Sydney (Y.Y., G.M.H., M.C.K., R.H.T.), Brain and Mind Centre and Central Clinical School, Faculty of Medicine and Health; School of Medical Sciences (G.M.H., R.H.T.), University of New South Wales; Neuroscience Research Australia (G.M.H., R.H.T.); and Department of Neurology (M.C.K.), Royal Prince Alfred Hospital, Sydney, Australia.
Neurology. 2019 Nov 5;93(19):e1748-e1755. doi: 10.1212/WNL.0000000000008439. Epub 2019 Oct 16.
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)でATXN2遺伝子またはC9ORF72遺伝子の反復伸長がある症例とない症例における、脳の運動領域のリン酸化および非リン酸化TAR DNA結合蛋白43(TAR DNA-binding protein 43:TDP-43)の量を評価する。ATXN2遺伝子またはC9ORF72遺伝子に反復伸長があるALSおよび孤発性ALS計23例ならびに対照10例の死後脳の運動皮質、脊髄、小脳虫部から採取した組織におけるTDP-43の45 kDaリン酸化体およびTDP-43の43 kDa非リン酸化体が免疫ブロットにより定量された。
C9ORF72遺伝子の伸長があるALS症例では運動皮質でリン酸化TDP-43濃度が有意に高く同定され、ATXN2遺伝子の伸長が中程度のALS症例では脊髄でリン酸化TDP-43が有意に高かった。これに対して、2つのALS群の非リン酸化TDP-43濃度は3つの領域でそれぞれ同程度であった。今回の結果では、リン酸化TDP-43濃度の有意差は示されているが、非リン酸化TDP-43濃度の有意差は示されていない。このことは、今回遺伝子伸長がある症例コホートで同定された、より病的なTDP-43の濃度の発生に、独特の翻訳後修飾が関与していることを示唆している。
コメント
ALSは、全身の運動神経に支配されている効果器のすべてが障害され、最悪の場合はtotally locked-in状態となる重症の神経変性疾患である。病態として今回検討されているTDP-43蛋白異常の関与が考えられ、C9ORF72遺伝子またはATXN2遺伝子の伸長があるALS症例における病的TDP-43の産生による病理学的機序が関与している可能性を指摘する報告が多い。今回、リン酸化、非リン酸化とは、別個の考え方の特異的で独特の翻訳後修飾異常の病態への関与が指摘された。変性疾患のアルツハイマー病の神経細胞変性の一因にミクログリアの関与を指摘する報告もあり、ALSにおいても新たな因子を考慮する必要性を示唆させる報告であり、興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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