難病Update

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コホート研究薬剤耐性菌

2019.12.04

薬剤耐性結核菌の患者の感染リスクと発病率の比較検討:前向きコホート研究

Transmissibility and potential for disease progression of drug resistant Mycobacterium tuberculosis: prospective cohort study.

Becerra MC1, Huang CC, Lecca L, Bayona J, Contreras C, Calderon R, Yataco R, Galea J, Zhang Z, Atwood S, Cohen T, Mitnick CD, Farmer P, Murray

1Department of Global Health and Social Medicine, Harvard Medical School, 641 Huntington Avenue, Boston, MA 02115, USA.

BMJ. 2019 Oct 24;367:l5894. doi: 10.1136/bmj.l5894.

 薬剤耐性菌による結核患者は感受性菌による患者より家庭内で接触者への感染性が低いと考えられてきたが、それが本当かどうか検討した。対象は、2009年9月 - 2012年9月の間にペルーのリマの106か所の地域保健センターの結核登録患者である。初発患者3,339例を薬剤感受性で分類すると、薬剤感受性患者6,189例、イソニアジド又はリファンピシン耐性の患者1,659例、多剤耐性(イソニアジド及びリファンピシン耐性)患者1,541例であった。家庭内接触者は10,160例であった。接触者を12か月フォローアップし、結核の感染状況(ツベルクリン反応検査陽性)及び活動性患者の発生率(喀痰塗抹検査陽性又は胸部X線による診断)を比較した。多剤耐性患者の接触者は薬剤感受性患者と比較すると感染リスクが8%高かった(95%信頼区間4 - 13%)。結核発生率の相対ハザード分析では、多剤耐性患者と感受性患者の間に家庭内接触者の発病率の差を認めなかった(補正ハザード比1.28、95%信頼区間0.9 - 1.83)。

コメント
 結核菌は治療可能な疾患となったが、多剤耐性結核患者は難病である。これまで多剤耐性菌となると患者の感染力が弱くなると考えられてきた。この点をコホート研究により確かめた研究であった。その結果、多剤耐性結核患者の家庭内における感染リスクはむしろ高く、発病率についても変わらないことが示された。多剤耐性結核は排菌を止めることができず感染者を増やしていく可能性がある。発見された結核患者の治療の徹底により耐性患者にしないことに力を注ぎ、発生した耐性菌患者による新たな感染者をつくらないように予防措置をより徹底する指針とする必要性がある。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed:
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