難病Update

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関節リウマチ

2019.12.04

関節リウマチの骨びらんの修復に対するトシリズマブ単独療法とアダリムマブ+メトトレキサート併用療法の効果の比較

Comparison of the effects of tocilizumab monotherapy and adalimumab in combination with methotrexate on bone erosion repair in rheumatoid arthritis

Finzel S1, Kraus S, Figueiredo CP, Regensburger A, Kocijan R, Rech J, Schett G

1Department of Internal Medicine 3, Friedrich Alexander University Erlangen-Nurnberg and Universitaetsklinikum Erlangen, Erlangen, Germany.

Ann Rheum Dis. 2019 Sep;78(9):1186-1191. doi: 10.1136/annrheumdis-2018-214894. Epub 2019 May 29.

 早期関節リウマチ(RA)における骨びらんの修復効果を、インターロイキン6(IL-6)受容体阻害薬と腫瘍壊死因子α阻害薬とで比較するため、前向き非無作為化観察研究を実施した。メトトレキサート(MTX)の効果が不十分な、骨びらんを有する活動性RA患者に対し、52週間のトシリズマブ(TOC)単独療法(33例)またはアダリムマブ(ADA)+MTX併用療法(33例)を行った。高解像度末梢骨用定量的CTを用い、ベースラインおよび52週の時点で中手骨頭および橈骨のびらん容積を測定した。CDAI、SADI、およびDAS28-ESRにより、12週ごとに臨床的反応をモニタリングした。DAS28-ESRに基づく疾患活動性は、TOC群(ベースライン時6.2±0.5、52週後2.3±1.0)、ADA/MTX群(6.3±0.6、2.8±1.2)ともに有意に低下した。しかし、中手骨頭および橈骨の骨びらん容積については、TOC群では有意な減少(P<0.001)がみられたものの、ADA/MTX群にはそのような減少はみられなかった(P=0.77)。中手骨頭および橈骨におけるびらん容積減少の平均値は、TOC群では-1.0±1.1 mm3と-3.3±5.9 mm3、ADA/MTX群では-0.05±0.9 mm3および-0.08±4.1 mm3であった。この研究によって、TOC単独療法の既存の骨びらんに対する修復効果はADA/MTXを上回ることが明らかとなった。RA患者の関節における骨の恒常性を妨げる主要な因子はIL-6である。

コメント
 バイオ製剤による1年未満の早期RA治療においてトシリズマブ(TOC)単独治療にアダリムマブ(ADA)+MTX治療とで、ほぼ臨床上の効果は同等であった。しかし、骨にたいする構造的変化については不明であった。本研究によりHR-PQCTを開いて、中手骨頭および橈骨における骨びらんの面積を測定したところ、いずれの場所においても、TOCは著明な改善修復を示したが、ADA/MTXでは悪化はなかったが、ほとんど変化がみられず、修復も認められなかった。この結果より、骨びらん形成にIL-6が深く関与し、TNF-αの関与は少ないことがあきらかとなった。またTOCのIL-6阻害が骨びらんの抑制を可能とすることが知られ、同じバイオでもIL-6の方が構造的寛解をもたらすことが期待された。
監訳・コメント:大阪大学 産業科学研究所 吉崎 和幸先生
PudMed:
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