メタアナリシス脳アミロイド血管症脳表ヘモジデリン沈着症
2020.02.18
脳アミロイド血管症における脳表ヘモジデリン沈着症と出血リスク:1件のメタアナリシス
Cortical superficial siderosis and bleeding risk in cerebral amyloid angiopathy: A meta-analysis
Charidimou A1, Boulouis G, Greenberg SM, Viswanathan A.
1From the Hemorrhagic Stroke Research Program (A.C., G.B., S.M.G., A.V.), Department of Neurology, Massachusetts General Hospital Stroke Research Center, Harvard Medical School, Boston; and Department of Neuroradiology (G.B.), Centre Hospitalier Sainte-Anne, Université Paris-Descartes, France. andreas.charidimou.09@ucl.ac.uk.
Neurology. 2019 Dec 10;93(24):e2192-e2202. doi: 10.1212/WNL.0000000000008590. Epub 2019 Nov 15.
脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy:CAA)における、脳表ヘモジデリン沈着症(cortical superficial siderosis:cSS)の有無と将来の出血リスクの程度との関連を評価する。ベースラインでT2*-MRI検査を受け、将来の脳内出血(intracerebral hemorrhage:ICH)に関して臨床的な追跡調査を受けた症候性CAA患者の臨床コホートのメタアナリシスを行った。混合効果モデルによる2段階のメタアナリシスでデータを統合した。多変量コックス比例ハザードモデルの、共変量による調整ハザード比(adjusted hazard ratio:adjHR)を用いた。
適格な6試験のデータを対象とした(n=1,239)。cSSの統合有病率は34%、限局性cSSの有病率が14%、びまん性cSSの有病率が20%であった。平均追跡調査期間3.1年(範囲1 - 4年)のあいだに、1,239例中162例に症候性ICHが認められ、統合発症率は6.9%/年であった。cSSの状態別のICH発症率(/年)は、cSSを有しない患者では3.9%、有する患者では11.1%、限局性cSSでは9.1%(95%CI 5.5% - 12.8%、I2 0%、P=0.994)、びまん性cSSでは12.5%(95%CI 5.3% - 19.7%、I2 73.2%、P=0.011)であった。
コメント
cSSは、脳の表面に持続的に漏れ出た血液が、ヘモジデリンになって沈着し、脳組織が破壊される疾病である。本論文のように、高齢者において脳の血管にアミロイドという物質が沈着して、血管の壁が弱くなり破れる、CAAも原因疾患の一つと考えられているが、多くの場合は明らかな原因が不明である。症状はこの疾患に必発であるが、聴神経にヘモジデリンが沈着することで生じる難聴、小脳表面に沈着することで生じる小脳失調、脊髄の表面に沈着して出現する、錐体路障害などがある。一方、CAAにおいて脳出血は生命の予後を左右する大きなイベントである。今回の研究から、ベースラインでT2*-MRI検査を行っていた症候性CAA生存者においてcSS(とくにびまん性、すなわち3脳溝を超えている場合)により将来のICHリスクが上昇するという、クラスIIIのエビデンスが得られた。CAA患者においてcSSの有無と程度は、MRIで予測しうる、将来のICHのもっとも重要なリスクファクターであり、治療の計画に役立つ可能性がある。興味ある論文と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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