Alves CRR1, Zhang R, Johnstone AJ, Garner R, Nwe PH, Siranosian JJ, Swoboda KJ.
1Department of Neurology, Center for Genomic Medicine, Massachusetts General Hospital, Boston.
1Department of Neurology, Center for Genomic Medicine, Massachusetts General Hospital, Boston.
Neurology. 2020 Mar 3;94(9):e921-e931. doi: 10.1212/WNL.0000000000008762. Epub 2019 Dec 27.
血清クレアチニン(creatinine:Crn)が、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)患者の脱神経の予測バイオマーカーになるという仮説を検証するため、SMA患者において血清Crn濃度を調べた。SMA患者238例のコホートで1,130件のCrn測定値を調査し、156例から、非脂肪量での補正に利用できる二重エネルギーX線吸収測定のデータが得られた。CrnとSMA病型、survival motor neuron2(SMN2)遺伝子コピー数、ハマースミス運動機能評価スケール(Hammersmith Functional Motor Scale:HFMS)スコアとの関連を調べた。
SMN2遺伝子が4コピーのSMA患者のCrn濃度は、2コピーのSMA患者の1.8倍高く(95%CI 1.57 - 2.11、P<0.0001)、3コピーのSMA患者の1.4倍高かった(95%CI 1.24 - 1.58、P<0.0001)。歩行可能患者、立位・歩行不能患者、座位不能患者のあいだでCrn濃度に有意差が認められ(P<0.0001)、Crnと尺骨神経刺激による最大複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)とのあいだ(P<0.0001)、およびCrnと運動単位数推定値(motor unit number estimation:MUNE)とのあいだ(P<0.0001)に正の関連が認められた。
コメント
SMAは、筋萎縮性側索硬化症と同様の運動ニューロン病の範疇に入る疾患で、小児期に発症するI型、II型、III型と、成人期に発症するIV型に分類される。小児期に発症するSMAは劣性遺伝性疾患で、原因遺伝子のSMN遺伝子(SMN1と近傍のSMN2)の変異による。本年の2月に遺伝子治療薬の販売が承認され、薬価の高価なことでも話題となった。治療可能となり、治療判定に用いる指標が重要になってきており、今回の論文は、Crn濃度の低下が疾患の重症度を反映することを示しており、CrnがSMAの進行をみるためのバイオマーカーの候補であることを示唆している。今後の研究においては、Crn濃度が分子治療や遺伝子治療に反応するかどうかを明らかにすることが重要となる。これまでにも、2018年3月23日付のNeurology電子版で名古屋大学神経内科の土方靖浩先生らは、運動ニューロン病の一つである球脊髄性筋萎縮症(SBMA)において、血清Crn値が筋力低下出現の15年ほど前から低下しはじめることを示し、血清Crn値が病態進行の良いバイオマーカーであることを明らかにした。今回の報告も疾患は相違するが同様の結果であり、遺伝子治療が可能になったSMAの早期診断、その後の治療効果判定に寄与する論文と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed: