2020.04.04
小児の水痘感染曝露後の成人の帯状疱疹の発症予防効果仮説の検証:英国の地域の医療データ内の自己比較研究
Risk of herpes zoster after exposure to varicella to explore the exogenous boosting hypothesis: self controlled case series study using UK electronic healthcare data
Forbes H1, Douglas I, Finn A, Breuer J, Bhaskaran K, Smeeth L, Packer S, Langan SM, Mansfield KE, Marlow R, Whitaker H, Warren-Gash C
1Faculty of Epidemiology and Population Health, London School of Hygiene and Tropical Medicine, London, WC1E7HT, UK harriet.forbes@lshtm.ac.uk.
BMJ. 2020 Jan 22;368:l6987. doi: 10.1136/bmj.l6987.
家庭内で小児から水痘に曝露されると成人の帯状疱疹の発生の予防効果があることが知られている。それを英国の一般医(国民の健康管理を担当している医師、家庭医である)又は紹介病院の診療記録を使って検証した研究である。1997-2018年に一般医において、観察期間中に水痘と診断された小児(18歳未満)と同居していた帯状疱疹と診断された成人は9,604例(18歳以上)であった。発症リスクの評価は、ベースライン期間(小児の水痘曝露前の60日間を除くその他すべての期間)の発症率と暴露後の発症率を比較することにより行った。女性は6,584例(68.6%)であった。曝露年齢中央値38.3歳、観察期間中央値14.7年であった。ベースライン期間に4,116例、暴露前60日間に433例、暴露後の期間に5,055例が帯状疱疹を発症した。発症率を、年齢、暦時間、季節を調整して、2年間の成人の帯状疱疹発症率として計算して比較したところ、33%発症が低かった(リスク比0.67、95%信頼区間0.62-0.73)。曝露後10-20年の期間の発症率として計算すると発症率は27%低くかった(0.73、0.62-0.87)。男性の方が女性より予防効果の増大を認めた。
コメント
家庭内で成人が小児から水痘に曝露されると帯状疱疹の相対発生率は低くなり、これが長期にわたる予防効果があることが示された。ところで、日本人の9割が水痘に感染しており、50歳を過ぎると帯状疱疹発症率が急激に上昇している。他方で、小児の水痘ワクチン定期化により水痘の流行が減少し、また核家族化が進行し、中高年齢者が自然感染する機会は少なくなっている。帯状疱疹について抗ヘルペスウイルス薬による治療成績は飛躍的に向上しているが合併症や頑固な神経痛の問題がある。そのため、2016年にわが国では50歳以上の者に対して帯状疱疹の予防に水痘ワクチンが使用できるようにした。水痘ワクチンを使用することは患者の減少だけでなく、帯状疱疹関連医療費の削減にもつながる。ワクチンで帯状疱疹が予防可能であることから、その普及を促すことが課題となっている。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed:
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