難病Update

難病Update

2020.06.09

自己抗体の消失と定義される免疫学的寛解は現在の治療戦略により得られるか?持続的なDMARDフリーの状態を達成した関節リウマチ患者の長期追跡調査

Does immunological remission, defined as disappearance of autoantibodies, occur with current treatment strategies? A long-term follow-up study in rheumatoid arthritis patients who achieved sustained DMARD-free status

Debbie M Boeters1, GLeonie E Burgers, René Em Toes, Annette van der Helm-van Mil

1Department of Rheumatology, Leiden University Medical Center, Leiden, The Netherlands D.M.Boeters@lumc.nl.

Ann Rheum Dis. 2019 Nov;78(11):1497-1504. doi:10.1136/annrheumdis-2018-214868. Epub 2019 Aug 14.

 疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の中止後に滑膜炎が認められないDMARDフリーの状態は治癒に近く、自己抗体陽性の関節リウマチ(RA)にはまれにしか観察されない。こうしたアウトカムの背景には、抗環状シトルリン化タンパク抗体(ACPA)やリウマトイド因子(RF)の消失と定義される免疫学的寛解があることが示唆されている。長期にわたりDMARDフリー寛解を達成しているRA患者における自己抗体の有無を明らかにするため、長期観察研究を実施した。DMARDフリーを達成し、追跡期間中この状態を維持したACPA陽性および/またはRF陽性のRA患者95例、DMARDフリーを達成したものの再発した自己抗体陽性患者21例、及びDMARDから離脱できなかった自己抗体陽性患者45例から、診断時、DMARDフリー寛解達成前後の検体587件を採取し、抗環状シトルリン化ペプチド2(抗CCP2)IgGおよびIgM、RF IgMを測定した。DMARDフリー寛解維持群で、寛解時に抗CCP2 IgG抗体が陰性化した患者は13%であった。陰性化の割合は、再発群では8%、疾患持続群では6%であった(p=0.63)。抗CCP2 IgMとRF IgMについても同様の結果が得られた。連続的な抗体価測定の結果、寛解を達成した患者のRFは達成できなかった患者より低かったが(p<0.001)、抗CCP2抗体に差は認められなかった(p=0.66)。自己抗体陽性のRAでは、持続的なDMARDフリーの状態は自己抗体の陰性化とは相関しない。したがって、こうした免疫学的寛解の定義をRAの長期の治療目標とすべきでない。
監訳:大阪大学 産業科学研究所 吉崎 和幸先生
PudMed:

一覧へ