難病Update

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2020.09.09

健忘性軽度認知機能障害においてin vivoでのシナプス密度の低下がタウの沈着と関連

In vivo synaptic density loss is related to tau deposition in amnestic mild cognitive impairment

Heleen Vanhaute1, Jenny Ceccarini, Laura Michiels, Michel Koole, Stefan Sunaert, Robin Lemmens, Eric Triau, Louise Emsell, Mathieu Vandenbulcke, Koen Van Laere

1From the Division of Nuclear Medicine (H.V., J.C., M.K., K.V.L.) and Department of Neurology (L.M., R.L.), University Hospitals Leuven; Nuclear Medicine and Molecular Imaging (H.V., J.C., M.K., S.S., L.E., K.V.L.) and Translational MRI (S.S., L.E.), Department of Imaging and Pathology, and Department of Geriatric Psychiatry (H.V., L.E., M.V.), University Psychiatric Centre, Laboratory for Neurobiology (L.M., R.L.), KU Leuven; and Center for Brain and Disease Research (L.M., R.L.), VIB-KU Leuven, Belgium. Dr. Triau is in private practice in Leuven, Belgium. koen.vanlaere@uzleuven.be

Neurology. 2020 Aug 4;95(5):e545-e553. doi: 10.1212/WNL.0000000000009818. Epub 2020 Jun 3.

 健忘性軽度認知機能障害(amnestic mild cognitive impairment:aMCI)患者において、シナプスの喪失と神経原線維変化の負荷が空間的に重なり、臨床症状と相関するかどうかをin vivoで調査する。この横断的研究では、aMCI患者10例と健常対照者10例が、11C-UCB-J(シナプス小胞蛋白2A)、18F-MK-6240(タウ沈着)、11C-ピッツバーグ化合物B(βアミロイド)を用いたトリプルPET-MRI検査、ならびに神経心理学的評価を受けた。
 aMCI患者では対照者と比較して、主に内側側頭葉(medial temporal lobe:MTL)の下部構造において11C-UCB-J結合の減少が認められた(48% - 51%、Pcluster=0.02)。18F-MK-6240結合は、同領域での増加が認められ(42% - 44%、Pcluster=0.0003)、連合皮質に広がっていた。MTLにおいて、18F-MK-6240の結合の高さは11C-UCB-Jの結合の低さと逆相関していた(P=0.02、r=-0.76)。認知機能検査の成績の低下は、海馬における18F-MK-6240結合の増加と11C-UCB-J結合の減少の両方と関連していたが(P<0.01、r>0.7)、多変量解析では18F-MK-6240結合のみが認知能力と有意に関連していた。

コメント
 アルツハイマー病の病態を、神経原線維変化と神経のシナプスの消失との関連で説明するアミロイドカスケード理論が提唱され久しいが、いまだ不明なことも多い。今回の報告は、aMCI患者では、主に、早期認知機能障害への関与が知られている主要領域において、タウの沈着が高度でシナプス密度が低く、MTLにおいてこれらが相互に関連していることを示していた。一方、タウの結合はすでに連合皮質に広がっており、アミロイドカスケード理論におけるタウの時間的及び空間的重要性をさらに明らかにした。
多くの人は、年齢とともに、物忘れを自覚し、「昔はもっと頭がよかったのに」と思うなどの、実際は認知機能障害ではない、いわゆる自覚的認知機能障害(SCI:subjective cognitive impairment)の時期を経験する。その後、手段的日常生活が若干制限される軽度認知障害(MCI、健忘が中心のみの場合はaMCI)を経て何割かの人はアルツハイマー病などの認知症へ移行するといわれている。一方、aMCIもある程度の割合で認知症へ移行せず、自覚的な物忘れや年齢相応の物忘れにとどまるという報告もある。今回検討された方法は、aMCIと年齢相応の物忘れとの関連など、縦断的研究への発展が期待され、興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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