難病Update

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2020.09.09

縦断的解析から明らかとなった重症COVID-19における免疫学的誤作動

Longitudinal analyses reveal immunological misfiring in severe COVID-19

Carolina Lucas1, Patrick Wong, Jon Klein, Tiago B R Castro, Julio Silva, Maria Sundaram, Mallory K Ellingson, Tianyang Mao, Ji Eun Oh, Benjamin Israelow, Takehiro Takahashi, Maria Tokuyama, Peiwen Lu, Arvind Venkataraman, Annsea Park, Subhasis Mohanty, Haowei Wang, Anne L Wyllie, Chantal B F Vogels, Rebecca Earnest, Sarah Lapidus, Isabel M Ott, Adam J Moore, M Catherine Muenker, John B Fournier, Melissa Campbell, Camila D Odio, Arnau Casanovas-Massana, Yale IMPACT Team; Roy Herbst, Albert C Shaw, Ruslan Medzhitov1, Wade L Schulz, Nathan D Grubaugh, Charles Dela Cruz, Shelli Farhadian, Albert I Ko, Saad B Omer, Akiko Iwasaki

1Department of Immunobiology, Yale University School of Medicine, New Haven, CT, USA.

Nature. 2020 Aug;584(7821):463-469. doi: 10.1038/s41586-020-2588-y. Epub 2020 Jul 27.

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の転帰と免疫の長期的相関を明らかにするため、中等症または重症のCOVID-19患者113例の免疫応答を解析した。これらの患者では自然免疫系が全般的に増加し、これと並行してT細胞が減少していることが免疫プロファイリングから明らかとなった。疾患初期のサイトカインの増加は転帰不良と関連があった。初期のサイトカインの増加後、中等症の患者では(ウイルスに対する)1型免疫応答と(真菌に対する)3型免疫応答が次第に低下したが、重症患者では疾患の経過を通して免疫応答の亢進が認められ、さらにインターロイキン5(IL-5)、IL-13、免疫グロブリンEおよび好酸球などの(寄生虫に対する)2型免疫応答のエフェクターの増加もみられた。unsupervised clustering analysisでは、疾患のトラジェクトリー(軌道)と関与する免疫シグネチャーとして、成長因子、2/3型サイトカイン、1/2/3型サイトカインの混在、およびケモカインが同定された。中等症のCOVID-19を発症しその後回復した患者では、組織中に修復能のある成長因子が豊富に認められた一方で、重症化した患者では4つのシグネチャーすべてが高値であった。この研究により、重症COVID-19および臨床転帰不良と関連する不適合な免疫応答プロファイルと、疾患のトラジェクトリーを左右する初期の免疫シグネチャーが明らかとなった。
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監訳:大阪大学 産業科学研究所 吉崎 和幸先生

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