難病Update

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アパシーパーキンソン病動機付け障害病的賭博非運動徴候

2020.10.27

パーキンソン病における無感情と衝動制御障害の併発

Co-occurrence of apathy and impulse control disorders in Parkinson’s disease

Bonnie M Scott1, Robert S Eisinger, Matthew R Burns, Janine Lopes, Michael S Okun, Aysegul Gunduz, Dawn Bowers

1Department of Clinical and Health Psychology, University of Florida, 1275 Center Dr, Gainesville, FL 32611, USA bonnie.m.scott@phhp.ufl.edu.

Neurology. 2020 Oct 1;10.1212/WNL.0000000000010965. doi: 10.1212/WNL.0000000000010965. Online ahead of print.

無感情と衝動制御障害(impulse control disorder:ICD)が独立に、動機付けスペクトラムの対極にあるものかどうかを実証的に検証する。単施設横断研究で、三次医療センターに通院する特発性パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)患者887例の人口統計学的データと臨床データを後ろ向きに収集した。無感情、ICD、不安、うつに関する自己評価尺度から、気分と動機付け障害を分類した。

PD患者での有症状者の割合は、うつ29.0%、不安40.7%、無感情41.3%、ICD 27.6%で、無感情とICDの両方を有する患者は17.0%であった。臨床的意義のあるICDを報告した患者の過半数(61.6%)が臨床的意義のある無感情も報告しており、無感情を有する患者(41.3%)の3分の1以上でICD症状スコアが高かった。ドパミン作動薬の使用量は、ICDのみの患者のほうが無感情のみの患者よりも多かった。このような複雑な行動症候群と気分とのあいだには相互作用がみられ、PD患者の無感情とICDがスペクトラムの対極にあるという概念に異議を唱えるものである。

コメント
アパシーは動機づけが欠如し目的指向活動の減少した状態とみなされ、日常臨床上は、意欲低下を呈し、PDでは高頻度に出現する。動機付けには、報酬系であるドパミン神経系が関与すると言われ、脳内で枯渇するとPDを発症すると言われている。今回、無感情とICDが独立に、動機付けスペクトラムの対極にあるものではなく、サブグループとして共存すことが示唆された。

一方、認知症を呈する疾患では、動機付け機能に関わると考えられてきたドパミン産生神経細胞が、動機付け機能に関わるグループと認知機能を担うグループに分かれているとの報告もある。今回の報告は、ドパミン神経系の異常によってうつ状態とICDの併発を示唆するものである。このような複雑な行動症候群と気分とのあいだには相互作用がみられ、著者らも指摘するように、その機序は将来の臨床試験のデザインや新規治療の開発に影響を及ぼす可能性があると考えられ、興味があり取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33004605

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