難病Update

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4価ヒトパピローマウイルスワクチンコホート研究デンマーク子宮頚がん自律神経障害

2020.10.27

デンマーク人女性における4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種と自律神経障害を伴う特定の症候群との関連性:地域ベースのコホート内症例対照分析

Association between quadrivalent human papillomavirus vaccination and selected syndromes with autonomic dysfunction in Danish females: population based, self-controlled, case series analysis

Anders Hviid1, Nicklas M Thorsen, Palle Valentiner-Branth, Morten Frisch, Kåre Mølbak

1Department of Epidemiology Research, Statens Serum Institut, Artillerivej 5, 2300 Copenhagen S, Denmark aii@ssi.dk.

BMJ. 2020 Sep 2;370:m2930. doi: 10.1136/bmj.m2930.

ヒトパピローマウイルスに対する4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種は、自律神経障害を伴う特定の症候群(ここでは慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性起立性頻脈症候群の3つとしている。以下には自律神経障害症候群と称す)の発生との関連が疑われている。そこで、デンマークの国民を対象とした地域住民のコホートを使い、デンマーク生まれで、2007 - 2016年の10 - 44歳の女性137万5,737人を対象とし、その中で特定された自律神経障害症候群と判定された869例を症例として、コホート内における症例対照分析を行った。分析にあたって、症例群と対照群の年齢及び季節要因を補正した。対象者の総観察人年は1,058万1,902人年であった。自律神経障害症候群の総数869例の個々の症候群の人数は慢性疲労症候群136例、複合性局所疼痛症候群535例、体位性起立性頻脈症候群198例であった。ワクチン接種後365日における自律神経障害群の発生率については総数、個々の症候群においても有意差は認めなかった。総数、慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性起立性頻脈症候群の各々の発生比(95%信頼区間)は、0.99(0.74-1.32)、0.38(0.13-1.09)、1.31(0.91-1.90)、0.86(0.48 -1.54)であった。ワクチン接種と自律神経障害症候群の発症との関連性は認められなかった。研究対象者数は大きいことから、本研究の結果の信頼性は高いと考えられる。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32878745/

コメント
女性の子宮頚がんはヒトパピローマウイルス感染との関連が明らかにされ、ワクチンが実用化されているがワクチン接種の副作用が懸念されている。本研究は、地域ベースの大規模コホートを使い、4価ヒトパピローマウイルスワクチンの接種の有無による自律神経障害症候群の発生との関連性をみたものである。症候群の総数でも、個々の症候群でも発症率は高くはなっていなかった。自律神経障害症候群は一定の比率で発生しているため接種の影響を評価するには対照群と比較する必要がある。本研究は、地域ベースの大規模コホートを使った研究であり、この結果の信頼性は高いと考えられる。

監訳・コメント:関西大学 社会安全研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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