難病Update

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グラフ解析コネクトミクス形態的ネットワーク機能的ネットワーク筋萎縮性側索硬化症(ALS)

2020.11.25

運動ニューロン疾患における脳の構造的・機能的コネクトーム 多施設共同MRI研究

Structural and functional brain connectome in motor neuron diseases A multicenter MRI study

Silvia Basaia1, Federica Agosta1, Camilla Cividini1, Francesca Trojsi1, Nilo Riva1, Edoardo G Spinelli1, Cristina Moglia1, Cinzia Femiano1, Veronica Castelnovo1, Elisa Canu1, Yuri Falzone1, Maria Rosaria Monsurrò1, Andrea Falini1, Adriano Chiò1, Gioacchino Tedeschi1, Massimo Filippi

1From the Neuroimaging Research Unit, Institute of Experimental Neurology, Division of Neuroscience, (S.B., F.A., C.C., E.G.S., V.C., E.C., M.F.), Neurorehabilitation Unit (N.R.), Neurology Unit (Y.F., M.F.), Neurophysiology Unit (M.F.), and Department of Neuroradiology and CERMAC (A.F.), IRCCS San Raffaele Scientific Institute; Vita-Salute San Raffaele University (F.A., C.C., E.G.S., V.C., Y.F., A.F., M.F.), Milan; Department of Advanced Medical and Surgical Sciences (F.T., C.F., M.R.M., G.T.), University of Campania "Luigi Vanvitelli," Naples; and ALS Center (C.M., A.C.), "Rita Levi Montalcini" Department of Neuroscience, University of Torino, Italy.

Neurology. 2020 Nov 3;95(18):e2552-e2564. doi: 10.1212/WNL.0000000000010731. Epub 2020 Sep 10.

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、および進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)における構造的・機能的神経機構を調査する。イタリアの3施設で、孤発性ALS患者173例、PLS患者38例、PMA患者28例、および健康な対照者79例を組み入れた。臨床評価、神経心理学的評価、および脳MRIによる評価を行った。グラフ解析とコネクトミクスを用いて、脳全体と脳葉の形態的ネットワーク特性、ならびに脳領域の構造的・機能的接続性を評価した。

健康な対照者と比較して、ALS患者とPLS患者では脳全体のネットワーク特性の変化に加えて、局所の形態的変化、ならびに感覚運動野、大脳基底核、前頭領域、頭頂領域での構造的接続性の低下が認められた。PMA患者では、有意な変化は認められなかった。ALS患者の中心前回、中脳、上前頭領域、ならびにPLS患者の感覚運動野、大脳基底核、側頭ネットワークで、局所の機能的接続性の亢進が認められた。ALS患者とPLS患者では、構造的接続性の変化が運動障害と相関していた。一方で、機能的接続性の途絶は遂行機能障害および行動障害と密接に関連していた。

URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32913015

コメント
ALSやPLSの構造的変化や機能的変化の進展過程を、タイムリーに及び非観血的に多数例を検討することは、これまでは困難であった。今回の論文は線形代数学様であるが、グラフ解析とコネクトミクスという手法を用い、多施設共同研究で、ALSとPLSにおいて運動および運動以外のネットワークに広く変性が認められた。このことから、グラフ解析とコネクトミクスが疾患に伴う上位運動ニューロンの変性、脳の運動外の変化、およびネットワーク再構築を検出するための有力なアプローチとなる可能性が示唆される。また、著者らが指摘するように、今後、同方法はALSの予後予測のマーカーとしても有用な方法の可能性もある。さらに、totally locked in状態で全く意思疎通がとれなくなったALS患者の感情の評価への応用も考えられ、研究の発展が期待され取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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