難病Update

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免疫抑制(immune suppression)制御性T細胞(Regulatory T cells)治験(clinical trial)移植(transplantation)

2020.11.25

腎移植患者に対する自己血の制御性T細胞投与の安全性と治療効果:第I/IIa相臨床試験

Regulatory T cells for minimising immune suppression in kidney transplantation: phase I/IIa clinical trial

Andy Roemhild1, Natalie Maureen Otto1, Guido Moll1, Mohamed Abou-El-Enein1, Daniel Kaiser1, Gantuja Bold1, Thomas Schachtner1, Mira Choi, Robert Oellinger, Sybille Landwehr-Kenzel1, Karsten Juerchott1, Birgit Sawitzki1, Cordula Giesler1, Anett Sefrin1, Carola Beier1, Dimitrios Laurin Wagner1, Stephan Schlickeiser1, Mathias Streitz1, Michael Schmueck-Henneresse1, Leila Amini1, Ulrik Stervbo, Nina Babel1, Hans-Dieter Volk1, Petra Reinke

1Berlin Institute of Health Center for Regenerative Therapies (BCRT), Charité Universitätsmedizin Berlin, Berlin, Germany.

BMJ. 2020 Oct 21;371:m3734. doi: 10.1136/bmj.m3734.

腎移植患者に自己採血中の制御性T細胞(以下、nTregと略す)投与が免疫制御にどう影響するのか検討を行った。研究はドイツ・ベルリンにあるシャリテ大学病院の生体腎移植を受けた患者を対象に行った。対象者を投与群11人、対照群9人に分けて比較評価した。投与群に移植後7日後に、CD4+CD25+FoxP3+nTregの自己成分を体重(kg)あたり0.5、1.0、2.5-3.0×10^6細胞のいずれの用量かを単回静脈内投与した。投与群には当初は3種の免疫抑制剤を投与したが段階的に漸減し、48週以後は低用量タクロリムスのみの単独療法を行った。対照群には3種の免疫抑制剤を継続した。60週時点で評価し、3年間の追跡調査を行った。対象者に腎生検を行った。評価は、急性拒絶反応の発生率、nTreg注入関連の有害作用、過度の免疫反応の徴候を使って行った。また、移植した臓器の生理機能の評価を行った。nTreg成分は術前2週間前に末梢血40-50 mLを採血し精製した。投与群において投与量に係わらず副作用を認めなかった。投与群、対照群ともに3年後の移植臓器の生着率は100%であった。臨床所見および副作用データに両群の差異は認めなかった。投与群11例中8例(73%)は免疫抑制剤の単独療法で安定していた。対照群は、2剤以上の免疫抑制剤の投与の継続が必要であった(P=0.002)。投与群では、T細胞の活性化が低下、多クローンから少クローンに変化し、免疫状態が落ち着いた。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33087345

コメント
制御性T細胞(regulatory T cell)は、自己免疫やアレルギーなどの過剰で、有害な免疫反応を抑制し、免疫寛容や免疫の恒常性維持に係わっているとされている。今回は移植患者に対して前もって採血で得た制御性T細胞成分を投与すると、移植後の拒絶免疫反応を免疫抑制剤数や使用量を少なくできる可能性があることが示された。自己血のnTregを拒絶反応制御に使えるとすれば、今後の臓器移植後の管理を容易とし、治療費を抑えることにもつながる。今後の移植治療のあり方に大きな影響を与える研究と言える。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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