難病Update

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gaboxadolアンジェルマン症候群分子遺伝学多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験

2021.01.25

STARS第II相試験:アンジェルマン症候群に対するgaboxadolの無作為化比較試験

The STARS Phase 2 Study: A Randomized Controlled Trial of Gaboxadol in Angelman Syndrome

Lynne M. Bird *, Cesar Ochoa-Lubinoff, Wen-Hann Tan, Gali Heimer, Raun D. Melmed, Amit Rakhit, Jeannie Visootsak, Matthew J. During, Christina Holcroft, Rebecca D. Burdine, Alexander Kolevzon, Ronald L. Thibert

 

*University of California, San Diego and Rady Childrens Hospital; 3020 Childrens Way #5031, San Diego, CA.

 

Neurology. 2020 Dec 21;10.1212/WNL.0000000000011409. doi: 10.1212/WNL.0000000000011409. Online ahead of print.

 

アンジェルマン症候群(AS)患者を対象にgaboxadol(OV101)の安全性、忍容性、および探索的有効性エンドポイントをプラセボと比較し評価する。gaboxadolは、γサブユニットを含むシナプス外γアミノ酪酸A(GABAA)受容体を活性化する高度に選択的なオルソステリック作動薬である。多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験で、分子遺伝学的にASと診断された青年と成人を、無作為に割り付けて12週間投与した。安全性と忍容性は、試験全体を通してモニタリングした。事前に規定した探索的有効性エンドポイントとして、ASに適合させた、臨床全般印象度-重症度(Clinical Global Impression - Severity:CGI-S)スケールと臨床全般印象度-改善(Clinical Global Impression - Improvement:CGI-I)スケールを挙げた。

 

88例が無作為化された。試験薬の投与を少なくとも1回以上受けた87例(年齢13 – 45歳)のうち、78例(90%)例が試験を完了した。ほとんどの有害事象(adverse events:AE)は軽度から中等度であり、生命を脅かすAEの報告はなかった。gaboxadolの有効性は、探索的解析においてCGI-Iの改善により測定し、gaboxadol 1日1回の有効性がプラセボとの比較で認められた(P=0.0006)。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33443117

 

コメント

平成27年に難病法が制定され、難病患者が法律で保護されるようになった。それを期に、昭和47年から開始された国の難病対策が変更され、指定難病は56疾病から333疾病に増えた。今回の論文は、新たに加わったASに関するものである。ASは、出生15,000に1人の割合で生まれ、重い知的障害、てんかん、ちょっとしたことでよく笑うどの特徴がみられる。15番染色体短腕q11-q13の母性染色体微細欠失などで起こると言われている。今回の報告は、アメリカでの臨床治験の結果であるが、gaboxadolはAS患者において全般的に安全で忍容性が良好であるというクラスIのエビデンスが得られた。ASに適応させた、CGI-Iスケールにより測定した有効性については、さらなる研究が必要であるが、稀少性難病に対する治療法の開発は、研究者や製薬会社の使命感に負うことが大きい。今回取り上げることで、発表者に敬意を表したい。

 

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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