難病Update

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AML(急性骨髄性白血病)MDS(骨髄異形成症候群)NY-ESO-1PRAMEWT1サバイビン再発高リスク同種造血幹細胞

2021.01.25

同種移植後の急性骨髄性白血病/骨髄異形成症候群患者に対するドナー由来の白血病特異的T細胞注入の臨床効果

Clinical effects of administering leukemia-specific donor T cells to patients with AML/MDS post-allogeneic transplant

Premal Lulla*, Swati Naik*, Spyridoula Vasileiou*, Ifigeneia Tzannou*, Ayumi Watanabe*, Manik Kuvalekar*, Suhasini Lulla*, George Carrum, Carlos Almeida Ramos*, Rammurti Kamble, LaQuisa C Hill*, Jasleen K Randhawa, Stephen Gottschalk, Robert Krance*, Wang Tao*, Mengfen Wu*, Catherine Robertson, Adrian P Gee, Betty Mi-Yung Chung, Bambi Grilley*, Malcolm Brenner, Helen Heslop*, Juan F Vera*, Ann M Leen*

*Baylor College of Medicine, Houston, Texas, United States.

Blood. 2020 Dec 3;blood.2020009471. doi: 10.1182/blood.2020009471. Online ahead of print

急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群(MDS)の患者では、同種造血幹細胞移植(HCT)後の再発は死因の上位を占める。再発例に対する治療法として、移植片対白血病(GVL)効果の強化を目的としたドナーリンパ球輸注療法(DLI)が用いられる。しかし、注入されるリンパ球は白血病特異的に選択されたものではないため、そのGVL効果には、アロ反応性リンパ球の同時注入が原因の生命を脅かす移植片対宿主病(GVHD)が伴うことが多い。GVHDを最小限に抑えGVLを最大限高めるため、AML/MDSの細胞が発現する複数の癌抗原(PRAME、WT1、サバイビン、NY-ESO-1)に反応する、幹細胞ドナー由来のT細胞を選択的に活性化させ、増殖させた(multi-leukemia antigen specificity: mLSTs)。HCTドナー29名から得られたこれらのT細胞は、複数の白血病抗原への特異性を示した。in vitroでは、mLSTsはDLIとは異なり、白血病抗原を細胞表面に提示した細胞を選択的に認識して殺傷する一方、レシピエントの正常な細胞には活性を示さなかった。HCT後のAML/MDS患者25例(17例は再発の高リスク患者、8例は再発患者)にmLSTs(0.5 - 10×10個/m²)を注入したところ、忍容性は良好であり10×10個/m²までグレード2を超える急性GVHDまたは全身型の慢性GVHDは認められなかった。再発高リスクの症例でHCT後寛解時にmLSTsを行ったコホートでは1.9年間の追跡調査では無白血病生存期間(LFS)の中央値には到達しなかったが17例中11例が無再発で、2年全生存率(OS)の推定値は77%となった。再発リスクが同等なAML/MDSの移植後症例のメタ解析では2年生存率の平均42%(38 - 46%)であり有効性を示唆した。再発コホートにおいて8例中2例で奏効(完全奏効1例、部分奏効1例)が示された。mLSTsは安全であり、HCT後のAML/MDSの再発防止または治療に有望な治療法である。

URL
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33270816

コメント
再発高リスクのAML患者に対して造血幹細胞移植が行われているが、2年生存率は40%程度と満足できる状況になく、さらなる治療法が望まれている。本研究では造血幹細胞移植ドナーの血液を採取し、リンパ球分画を分離後4種類の白血病抗原で刺激することで白血病細胞特異的に傷害できるT細胞を増幅させることができる事とその細胞を造血幹細胞移植後の患者に輸注することで、GVHDを増強させることなく抗白血病効果を得ている。観察期間が短く、症例数が多くないので今後さらなる検証が待たれる。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄付講座 寄附講座教授 坪井 昭博先生

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