難病Update

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HDL-Cレビー小体多変量調整Cox比例ハザード回帰分析

2021.02.26

高比重リポ蛋白コレステロールの変動とパーキンソン病発症リスク

Association of High-density Lipoprotein Cholesterol Variability and the Risk of Developing Parkinson’s Disease

Joo-Hyun Park*, Chung-Woo Lee, Myung Ji Nam, Hyunjin Kim*, Do-Young Kwon, Ji Won Yoo, Kyu Na Lee, Kyungdo Han, Jin-Hyung Jung, Yong-Gyu Park, Do-Hoon Kim*

*Department of Family Medicine, Korea University Ansan Hospital, Korea University College of Medicine, Ansan, Republic of Korea kmcfm@hanmail.net.

Neurology. 2021 Feb 3;10.1212/WNL.0000000000011553. doi: 10.1212/WNL.0000000000011553. Online ahead of print.

高比重リポ蛋白コレステロール(high-density lipoprotein cholesterol:HDL-C)値およびHDL-Cの変動とパーキンソン病(Parkinson's disease:PD)発症リスクとの縦断的な関連を調査することを目的とした。地域住民を対象とした全国規模のコホート研究を行った。2008 - 13年に韓国の国民健康保険制度で実施された健康診断を3回以上受けた65歳以上の被験者382,391例を対象とし、2017年まで追跡調査を行った。多変量調整Cox比例ハザード回帰分析を行った。

中央値5年の追跡調査期間に、380,404例のうち2,733例が新たにPDと診断された。ベースラインのHDL-Cおよび平均HDL-Cの最低四分位(Q1)群では、最高四分位(Q4)群と比較してPD発症率が高かった[それぞれ調整ハザード比(adjusted hazard ratio:aHR)1.20、95%CI 1.08 - 1.34、およびaHR 1.16、95%CI 1.04 - 1.30]。HDL-C変動(VIM)のQ4群では、Q1群と比較してPD発症率が高かった(aHR 1.19、95%CI 1.06 - 1.33)。ベースラインのHDL-CがQ1かつHDL-C変動がQ4の群でPD発症リスクが最も高かった(aHR 1.6、95%CI 1.31 - 1.96)。

URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33536275

コメント
シヌクレイノパチーは、神経細胞、神経線維、またはグリア細胞におけるα-シヌクレインタンパク質の異常な凝集体の蓄積を病理学的特徴とする神経変性疾患である。一方、α-シヌクレインタンパク質の異常な凝集体を主な構成要素とする小体はレビー小体と呼ばれ、PD、レビー小体型認知症などの一連のレビー小体病スペクトラムを構成する疾患群の特徴所見とされる。最近、大阪大学の荒木らにより、レビー小体の周辺にアミロイドのβシートが多く、中心は脂質や蛋白質により構成されていることが解ってきた(Scientific Reports誌 2015)。どの物質がもっとも毒性を発揮するのか、またどのような因子がそれを引き起こし、神経細胞の崩壊をもたらすのかは、不明である。しかし、今回の報告で、HDL-C値が低いことおよびHDL-Cの変動が大きいことなど、脂質異常がPDの誘因になる可能性が示唆された。推測しすぎであるが、レビー小体の脂蓄積の重要性をも示唆もさせる。今後多数例での公衆衛生学的検討は必要であるが、進行予防にも生活習慣病の改善が役に立つ可能性を支持する報告と考えられ、慢性疾患の療養態度に与える興味は大きいと考え取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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