2021.02.26
背部痛と変形性関節症の疼痛に対する抗うつ剤の有効性と安全性:システマティックレビューとメタアナリシス
Efficacy and safety of antidepressants for the treatment of back pain and osteoarthritis: systematic review and meta-analysis
Giovanni E Ferreira*, Andrew J McLachlan, Chung-Wei Christine Lin, Joshua R Zadro, Christina Abdel-Shaheed, Mary O'Keeffe, Chris G Maher
*Sydney School of Public Health, Faculty of Medicine and Health, University of Sydney, Sydney, NSW, 2050, Australia
giovanni.ferreira@sydney.edu.au.
BMJ. 2021 Jan 20;372:m4825. doi: 10.1136/bmj.m4825.
背部痛と変形性関節症疼痛に対して各種の抗うつ薬が使われているが、その有効性と安全性が十分に評価されていない。腰痛、頸部痛、坐骨神経痛、変形性股関節症痛、変形性膝関節症痛に対して抗うつ薬を投与した無作為化比較試験により有効性と安全性を評価した論文をMedline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、International Pharmaceutical Abstracts、ClinicalTrials.gov、World Health Organization International Clinical Trials Registry Platformの文献データーベースから選び出した。主要評価項目は、痛みと障害で、0(痛みも障害もなし)から100(最悪の痛みまたは障害を有する)のスコアで評価した。副次評価項目は、安全性(あらゆる有害・重篤事象、有害事象のために試験を中止した参加者の割合)を項目とし、有効性は、GRADE(grading of recommendations assessment, development and evaluation)を用いて評価した。抽出された論文は33件(対象者5,318例)であった。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin noradrenaline reuptake inhibitors:SNRI)は、「背部痛」は、3 - 13週時点で平均差−5.30(95%CI:−7.31 - −3.30)の軽減がみられ、中程度の効果を認めた。「変形性関節症痛」は、−9.72(−12.75 - −6.69)の軽減で効果であった。「坐骨神経痛」に対しては、2週以内の時点で−18.6(95%CI:−31.87 - −5.33)、3 - 13週時点で−17.50(−42.90 - +7.89)の軽減効果を認めた。
三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressants:TCA)は、「坐骨神経痛」では2週以内の時点で−7.55(−18.25 - +3.15)、3 - 13週時点で−15.95(−31.52 - −0.39)、3 - 12カ月時点で−27.0(−36.11 - −17.89)であり軽減効果は乏しかった。
SNRIは、「背部痛障害」に対しては、3 - 13週時点で−3.55、(−5.22 - −1.88)の軽減効果があった。「変形性関節症障害」に対しては、2週以内の時点で−5.10(−7.31 - −2.89)の軽減効果であった。「変形性関節症障害」は、3 - 13週時点で−6.07(−8.13 - −4.02)の軽減であった。つまり、TCAと他の抗うつ薬は、「背部痛または背部痛の障害」の軽減効果は乏しかった。SNRIは疼痛や障害に対する効果を認めたが大きなものではなかった。背部痛には効果がなく、変形性関節症痛には少し効果があるという結果であった。TCA及びSNRIは坐骨神経痛に有効である可能性があるが、効果評価の幅が大きかった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33472813
コメント
腰痛や変形性関節症痛に悩む者が多くなっている。これらの者にセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ剤の投与が行われているが、その効果の評価はなされていないためシステマティックレビューとメタアナリシスにより評価を試みたものである。SNRIは、腰痛や変形性関節症痛に少し効果があるとされた。坐骨神経痛に対するSNRIと三環系抗うつ薬の臨床効果はわずかに認められたが評価するまでに至っていない。SNRIは、有害事象リスクを高めていたので注意が必要である。その他の抗うつ薬については研究実施数が少なく評価できていない。日常的に使われている医薬品は、様々な患者に様々な状況で使われているのでその有効性や安全性を評価するのは案外難しい。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生