難病Update

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バルセロナ多発性硬化症新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )横断的混合型研究

2021.03.25

多発性硬化症(MS)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生率と影響:バルセロナの1施設のMS診療部門の調査から

Incidence and Impact of COVID-19 in MS: A Survey From a Barcelona MS Unit

Maria Sepúlveda*, Sara Llufriu*, Eugenia Martínez-Hernández*, Martí Català*, Montse Artola*, Ana Hernando*, Carmen Montejo*, Irene Pulido-Valdeolivas*, Eloy Martínez-Heras*, Mar Guasp*, Elisabeth Solana*, Laura Llansó*, Domingo Escudero*, Marta Aldea*, Clara Prats*, Francesc Graus*, Yolanda Blanco*, Albert Saiz

*From the Neuroimmunology and Multiple Sclerosis Unit (M.S., S.L., E. Martínez-Hernández, M. Artola, A.H., C.M., I.P.-V., E. Martínez-Heras, M.G., E.S., L.L., D.E., Y.B., A.S.), Service of Neurology, Hospital Clinic, Institut d'Investigacions Biomèdiques August Pi i Sunyer (IDIBAPS), and Universitat de Barcelona; Comparative Medicine and Bioimage Centre of Catalonia (CMCiB) (M.C., C.P.), Fundació Institut d'Investigació en Ciències de la Salut Germans Trias i Pujol; Department of Physics (M.C., C.P.), Universitat Politècnica de Catalunya; Preventive Medicine and Epidemiology Department (M. Aldea), Hospital Clinic of Barcelona, University of Barcelona; Neuroimmunology Program (F.G.), Institut d'Investigacions Biomèdiques August Pi i Sunyer (IDIBAPS); and Institut de Neurociències (A.S.), Universitat de Barcelona, Spain.

Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021 Jan 27;8(2):e954. doi: 10.1212/NXI.0000000000000954. Print 2021 Mar 4.

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)患者の単施設コホートにおける新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)の発生率を調査し、MS患者の併存疾患や治療がCOVID-19の転帰に及ぼす影響を探る。横断的混合型研究を実施した。バルセロナ大学ホスピタル・クリニックのMS診療部門で経過観察中のMS患者586例を対象に、電話インタビューおよび電子カルテのレビューを行った。パンデミック開始時からのCOVID-19確定例(PCRまたは抗体検査が陽性)およびCOVID-19全例(確定例と疑い例)の累積発生率をバルセロナ市住民の推計値と比較した。

計407例(69.5%)が調査を完了した。回答者の多く(67%)が女性であった。回答者の年齢中央値は48歳(範囲19 - 86歳)、84%が再発寛解型で、45%が1つ以上の併存疾患を有し、74.7%が疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)を受けていた。COVID-19の確定例は5例(1.2%)、疑い例は46例(11.3%)であった。COVID-19の累積発生率は一般集団よりも2倍近く高かった(P<0.001)。6例(11.7%)が入院し、そのうち5例は順調に回復して1例は死亡した。入院した割合が高かったのは、男性患者、糖尿病を有する患者、進行型MSの患者であった(P<0.05)。DMTは感染リスクおよび転帰と関連していなかった。

URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33504634

コメント
COVID-19の最初の報告から1年以上経過したが、依然集束とは程遠い状態である。以前当updateでCOVID-19に多発脳神経炎の合併例を取り上げたが、神経症状合併の報告が蓄積されるにつれ、神経障害はCOVID-19の合併症というよりも主要臨床像の一つとなりつつある。脳神経内科医のCOVID-19診療への果たす役割も大きくなってきた。今回のMSコホートでの報告では、COVID-19の発生率は一般集団よりも高かった。しかし、多くの患者は入院を必要とせず、併存疾患を有する割合やDMTを受けている割合が高かったにもかかわらず、転帰が良好であった。COVID-19への易感染性はあるが、経過に差はないと考えられた。他方、2021年2月からワクチン接種も開始されたが、難病の中でも病態が自己免疫と考えられ、病態修飾薬の治療を受けているMS患者さんから、ワクチン接種の可否を質問される医師も多いと思われる。COVID-19による急性散在性脳脊髄炎(MSに類似した疾患で、ワクチン接種後に発症することもある)の報告もあり、今回はワクチン接種の検討はされていないが、問題定義の論文として興味があり取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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