難病Update

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BRCA遺伝子変SNP チップシークエンス分析希少病原変異陽性的中率

2021.03.25

希少病原性遺伝子変異にSNPチップを使うことの有効性の検討:地域ベース研究から

Use of SNP chips to detect rare pathogenic variants: retrospective, population based diagnostic evaluation

Weedon Mn*, Jackson L*, Harrison Jw*, Ruth Ks*, Tyrrell J*, Hattersley At*, Wright Cf*

*Institute of Biomedical and Clinical Science, University of Exeter College of Medicine and Health, Royal Devon and Exeter Hospital, Exeter EX2 5DW, UK.

BMJ. 2021 Feb 15;372:n214. doi: 10.1136/bmj.n214.

SNPチップを使って地域における遺伝子変異のスクリーニング検査が有効か、について評価するためにシークエンス分析の結果をゴールデンスタンダードとし、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を使って評価した。対象者は、英国バイオバンク(UK Biobank)の登録者49,908例と、一般向けの市販の遺伝子検査によるPersonal Genome Projectのオンラインでデータを得た21例であった。希少遺伝子変異としてBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子を扱った。BRCA遺伝子変異による関連がん(乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がん)は「がん登録」で把握した。頻度の高い遺伝子変異のSNPチップによる感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率は、108,574に対してすべて99%以上と高かった。しかし、0.001%未満の頻度の非常に希少な遺伝子変異4,757については、陽性的中率は16%で低かった。Personal Genome Projectの21例について、SNPチップを使った変異遺伝の識別で希少な病原性変異の偽陽性が20例に1つ以上あった。希少病原性変異のBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の検出のSNPチップの精度は、感度34.6%、特異度98.3%、陽性的中率4.2%、陰性的中率99.9%であった。SNPチップの陽性者の陰性者に対するBRCA関連がんの年齢調整オッズ比は1.31(95%CI:0.99 - 1.71)で有意差はなかった。シークエンス分析による陽性者は、陰性者に対する年齢調整オッズ比は4.05(2.72 - 6.03)で有意差があった。


URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33589468/

コメント
遺伝子の変異の検出をSNP(Single Nucleotide Polymorphism)チップ(DNAマイクロアレイ)を開発して簡単に行えるようになってきている。SNPチップを使って遺伝子変異による疾患をスクリーニングすることが有効かを検討した研究であった。SNPチップは、頻度の高い遺伝性疾患の検出には有効であったが、BRCA関連がんのように極めて希少な病原性遺伝子変異については陽性的中率が極めて低かった。SNPチップが使えるようになったが、希少病原性遺伝子変異による疾患スクリーニングに使うことには問題がある。
遺伝子検査の手法が開発され簡便なものが登場しているが極めて頻度の低い遺伝子変異による疾患の検査を地域住民に対して行うということは慎重であるべきである。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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