2021.04.27
アミロイド値低下治療が認知機能変化に与える効果:無作為化試験のメタアナリシスから
Effect of reductions in amyloid levels on cognitive change in randomized trials: instrumental variable meta-analysis
Sarah F Ackley*, Scott C Zimmerman*, Willa D Brenowitz*, Eric J Tchetgen Tchetgen, Audra L Gold*, Jennifer J Manly, Elizabeth Rose Mayeda, Teresa J Filshtein, Melinda C Power, Fanny M Elahi, Adam M Brickman, M Maria Glymour
*Department of Epidemiology and Biostatistics, University of California, San Francisco, 550 16th Street, San Francisco, CA, USA.
BMJ. 2021 Feb 25;372:n156. doi: 10.1136/bmj.n156.
認知症の原因として、アミロイド物質の蓄積が指摘されている。アミロイド標的薬を使うことでアミロイド値を低下させることが可能となってきたが、それにより認知機能が改善するのかについてはこれまでの個々の研究では結論が得られていない。そこで、無作為化比較試験で行われた14の研究データを統合して、評価を行った。対象とした研究は、50歳以上で軽度認知障害またはアルツハイマー病の診断を受けベースライン時点でアミロイド陽性の者を対象としたものである。脳アミロイド値の変化についてはアミロイド陽電子放出断層撮影で評価した。認知機能評価は、認知機能検査スコア(MMSE scores)を使って行った。研究データを統合して分析すると、アミロイド値の低下効果についてはミニメンタルステート検査スコアの0.03ポイントの改善(95%CI:-0.06 - 0.1)しか認められず、これは有意な変化とは言えなかった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33632704
コメント
アルツハイマー型認知症の発症にアミロイドの蓄積が関係していることが報告されている。現在新薬開発はこのアミロイド仮説に基づいて行われている。しかし、アミロイドの蓄積があると必ず認知機能が低下するのかは明らかではない。アミロイドを標的とした医薬品を使った臨床試験が行われているが効果についての一定の結論がでていない。そこで、入手可能な14の臨床試験データを統合して評価を行った。その結果、脳内アミロイドを減少させることで認知機能が実質的に改善するとは言えなかった。アミロイド以外の物質に対して医薬品を開発する必要があると指摘している。認知症の予防と治療の見通しはまだ立っておらず、今回の結果もそのことを示しているものであった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生