難病Update

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Mayo Clinic原発性側索硬化症後ろ向き研究筋萎縮性側索硬化症鑑別診断

2021.05.26

「純粋な」原発性側索硬化症の自然史

Natural History of “Pure” Primary Lateral Sclerosis

Anhar Hassan*, Shivam Om Mittal, William T Hu, Keith A Josephs, Eric J Sorenson, J Eric Ahlskog

*From the Department of Neurology (A.H., K.A.J., E.J.S., J.E.A.), Mayo Clinic, Rochester, MN; Department of Neurology (S.O.M.), Cleveland Clinic Abu Dhabi, United Arab Emirates; and Department of Neurology (W.T.H.), Emory University, Atlanta, GA. hassan.anhar@mayo.edu.

Neurology. 2021 Apr 27;96(17):e2231-e2238. doi: 10.1212/WNL.0000000000011771. Epub 2021 Feb 26.

筋電図が正常な場合に純粋と分類される原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)が、長期に経過を追跡するなかで筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)に変化するかどうかを評価する。Mayo Clinic(Rochester, MN)の純粋PLSの患者を対象に、後ろ向きカルテレビューを行った(1990 - 2016年)。組入れ基準は、最初に症状がみられてから4年間の筋電図が正常であることとした。

43例に純粋PLSが認められ(女性25例、58%)、発症年齢中央値は50歳(範囲38 - 78歳)であり、中央値で9年の罹病期間(範囲4 - 36年)追跡調査を行った。発症時の表現型は上行性不全対麻痺(n=30、70%)が最も多く、次いで不全片麻痺(n=9、21%)、球麻痺(n=4、9%)であった。上行性不全対麻痺で発症した30例では、膀胱症状(n=18、60%)と構音障害(n=15、50%)が仮性球麻痺症状(n=9、30%)や嚥下障害(n=8、27%)よりも多かった。最終の追跡調査までに、30例のうち17例(56%)が杖を使用し、6例(20%)が車椅子を必要とした。不全対麻痺型は、不全片麻痺型や球麻痺型と比較して、発症年齢が若かった(48歳 vs 56歳 vs 60歳、P=0.02)。

URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33637635

コメント
ALS診断において困難なことの一つにPLSとの鑑別がある。しかも、ALSの分類では、亜型として原発性側索硬化症が入っており、一見矛盾しているようであるが、別個の疾患であり、予後の相違もあることから、早期の鑑別は重要である。今回の対象PLS集団、すなわち最初に症状がみられてから4年間の筋電図が正常であった場合、中央値で9年の罹病期間追跡した結果、2例に軽微な筋電図異常が生じたものの、永久的な非侵襲的換気を必要とする例はなく、ALSに変化せず、純粋PLSとの診断は可能であることが示唆された。さらに、上行性不全対麻痺において、発症年齢が若く膀胱障害が多くみられたこともPLS早期診断の一助になる可能性も示された。私共が厚労省の難病対策事業における指定難病を申請する場合、上位障害のみの場合、発症後4年未満の時は、ALSで申請し、4年経過後も依然として上位障害のみの場合、PLSと申請疾病名を変更することがbetterかもしれない。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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