2021.06.23
ニューロフィードバックによる促進が脳卒中後の歩行とバランスの回復にもたらす効果 無作為化比較試験
Effect of Neurofeedback Facilitation on Poststroke Gait and Balance Recovery A Randomized Controlled Trial
Masahito Mihara*, Hiroaki Fujimoto, Noriaki Hattori, Hironori Otomune, Yuta Kajiyama, Kuni Konaka, Yoshiyuki Watanabe, Yuichi Hiramatsu, Yoshihide Sunada, Ichiro Miyai, Hideki Mochizuki
*From the Department of Neurology (M.M., Y.S.), Kawasaki Medical School, Kurashiki; Departments of Neurology (M.M., H.O., Y.K., K.K., H.M.) and Radiology (Y.W.), Osaka University Graduate School of Medicine, Suita; Neurorehabilitation Research Institute (H.F., Y.H., I.M.), Morinomiya Hospital, Osaka; Division of Clinical Neuroengineering (N.H.), Osaka University Global Center for Medical Engineering and Informatics, Suita; and Department of Rehabilitation (N.H.), Toyama University, Japan. mihara@med.kawasaki-m.ac.jp.
Neurology. 2021 May 25;96(21):e2587-e2598. doi: 10.1212/WNL.0000000000011989. Epub 2021 Apr 20.
機能的近赤外分光分析法を用いたニューロフィードバック(functional near-infrared spectroscopy-mediated neurofeedback:fNIRS-NFB)によって補足運動野(supplementary motor area:SMA)を促進することで脳卒中後の歩行とバランスの回復の度合いが高まるという仮説を検証するため、日本人患者54例を対象に、3 mのTimed Up and Go(TUG)テストを用いた2施設二重盲検無作為化比較試験を実施した。皮質下脳卒中による軽度ないし中等度の歩行障害があり、発症後12週間以上経過している患者に、歩行やバランスに関連する運動を想像する際にfNIRS-NFBを用いる、ニューロフィードバックによるSMAの促進を6セット行った。主要評価項目は、介入後4週間の時点でのTUGの改善とした。
TUGテストでは、介入群(12.84±15.07秒、95%信頼区間[CI]7.00 - 18.68)のほうがシャム群(5.51±7.64秒、95%CI 2.43 - 8.60)よりも大きな改善が認められ(群間差7.33秒、95%CI 0.83 - 13.83、P=0.028)、共変量で調整後も同様であった(群×時間の交互作用F1.23,61.69=4.50、P=0.030、partial η²=0.083)。介入群でのみ、想像に関連するSMA賦活化の有意な増強と、安静時のSMAと腹外側運動前野との結合性の強化が認められた。
URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33879597
コメント
NIRSは近赤外領域の光が骨や皮下組織などに対して高い透過性を有する特徴を生かして,比較的簡便な装置で大脳皮質の神経活動を評価することのできる非侵襲的脳機能画像技術の1つである。本報告は、皮質下脳卒中による軽度ないし中等度の補足運動野障害による歩行障害のリハビリテーションに応用し,得られた信号を患者にニューロフィードバックさせ,脳活動を変化させるニューロモジュレーション技術を確立したものである。SMAを促進することで、SMAとその関連ネットワークが調整され、脳卒中後の歩行とバランスの回復の度合いが高まることが示され、クラスIIIのエビデンスが得られた。今後パーキンソン病や進行性核上性麻痺など、補足運動野障害により運動開始が遅れると考えられている、神経難病などの廃用症候群への臨床応用が期待され、取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生