難病Update

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2021.06.23

イングランドの全住民約5,400万人を対象とした健康医療の電子情報を使ったコホート研究の実施体制の確立

Linked electronic health records for research on a nationwide cohort of more than 54 million people in England: data resource

Angela Wood*, Rachel Denholm, Sam Hollings, Jennifer Cooper, Samantha Ip*, Venexia Walker, Spiros Denaxas, Ashley Akbari, Amitava Banerjee, William Whiteley, Alvina Lai, Jonathan Sterne, Cathie Sudlow, CVD-COVID-UK consortium

*British Heart Foundation Cardiovascular Epidemiology Unit, Department of Public Health and Primary Care, University of Cambridge, Cambridge, UK.

BMJ. 2021 Apr 7;373:n826. doi: 10.1136/bmj.n826.


新型コロナウイルス感染症(covid-19)および心血管疾患に関する実態を調査分析するために、イングランドのほぼ全数の住民の健康医療情報(EHR)を利用する研究体制をつくった。2020年1月1日時点のNHSの総合診療医に登録されているイングランドの住民5,440万人のプライマリケア受診記録、病院診療記録、死亡登録、Covid-19臨床検査データ、調剤データを個人レベルでリンクした。専門医療に関する集中治療、心血管およびCovid-19ワクチン接種データも今後入れる計画である。評価項目として、Covid-19確定例および疑い例の診断、脳卒中・一過性脳虚血発作・心筋梗塞の罹患例、2020年1月1日 - 10月31日の間の全死因死亡例を使った。電子情報は、信頼できる国民保健サービス(NHS)のデジタル部門(NHS Digital)で利用可能である。コホートにはイングランド住民の96%超が含まれ、年齢、性別および人種に関する社会的属性のデータが約95%入っている。

脳卒中または一過性脳虚血発作の既往歴のない5,330万人の中で両疾患に罹患した者は2020年1月1日 - 10月31日の間に98,721例あった。プライマリケアの記録のみの者が30%であった。死亡登録のみの者は4%であった。心筋梗塞の既往歴のない5,320万人については、この期間に心筋梗塞の罹患者は62,966例あった。プライマリケアの記録のみの者は8%、死亡登録のみの者は12%であった。Covid-19の確定例および疑い例の者は959,470例あった。プライマリケアの記録がある者は714,162例、入院記録がある者は126,349例、臨床検査記録がある者は776,503例、死亡記録がある者は50,504例であった。プライマリケアと臨床検査の両方に登録されている者は58%であった。プライマリケアだけに登録されている者が15%、臨床検査だけに登録されている者が18%であった。心血管系イベントおよびCovid-19の実態を確実に把握するためにデータをリンクし、利用できるようにした。今後、Covid-19および心血管疾患の研究だけでなく、その他の臨床や公衆衛生に関する研究にも拡大していく計画である。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33827854

コメント
病気の診断、治療、管理、予後を行うためには病気の自然史を知る必要がある。そのためにはすべての人々の健康や医療の情報記録をリンクして分析する必要がある。イングランドでは医療サービスは公的に運用されているため健康・医療情報のリンクが可能である。また死亡データも監察医制度があり、リンクすることができる。今後、Covid-19の後遺症や併発症、またワクチン接種者の副作用や併発症などの分析が進められ、報告されるものと思われる。日本ではすべての国民の医療機関のデータをリンクすることは難しい。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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