難病Update

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cohort studyFranceneurodevelopmental disabilitypretermschool assistance

2021.07.27

早産児の5歳時点における神経発達障害の転帰:EPIPAGE-2のコホート研究による

Neurodevelopmental outcomes at age 5 among children born preterm: EPIPAGE-2 cohort study

Véronique Pierrat*, Laetitia Marchand-Martin, Stéphane Marret, Catherine Arnaud, Valérie Benhammou, Gilles Cambonie, Thierry Debillon, Marie-Noëlle Dufourg, Catherine Gire, François Goffinet, Monique Kaminski, Alexandre Lapillonne, Andrei Scott Morgan, Jean-Christophe Rozé, Sabrina Twilhaar, Marie-Aline Charles, Pierre-Yves Ancel, EPIPAGE-2 writing group

*University of Paris, CRESS, Obstetrical Perinatal and Pediatric Epidemiology Research Team, EPOPé, INSERM, INRAE, F-75004 Paris, France veronique.pierrat@inserm.fr.

BMJ. 2021 Apr 28;373:n741. doi: 10.1136/bmj.n741.

フランスで2011年に地域ベースのコホートを使い早産で産まれた児の5歳時点の神経発達の状態を評価検討した。在胎24 - 26、27 - 31、32 - 34の週に出生した5歳半児は4,441例いた。神経発達の障害の程度を次のように定義した。「重度/中等度の神経発達障害」とは、重度/中等度脳性麻痺(粗大運動能力分類システム[GMFCS]≧2)、片眼/両眼失明、片耳/両耳聴覚消失、または全検査知能指数が-2標準偏差未満(ウェクスラー就学前・小学生知能評価尺度、第4版)とした。「軽度の神経発達障害」とは、軽度脳性麻痺(GMFCS-1)、視覚障害(≧3.2/10、<5/10)、難聴(<40 dB)、全検査知能指数(-2~-1標準偏差)、発達性協調運動症(Movement Assessment Battery for Children第2版、合計スコアが5th centile以下)、または行動困難(強みと困難の質問票、合計スコアが90th centile以上)、学校での支援(支援付きの普通学級または特別支援学校)、複雑な発達的介入、および発達に両親が困難を抱えている状態とした。評価は、同時期の正期産児と比較して行った。

対象とした4,441例の中で神経発達の評価が行えたのは3,083児(69.4%)であった。在胎期間が24 - 26、27 - 31、32 - 34週の出生児の「重度/中等度の神経発達障害」の児の割合は、28%(95%CI:23.4 - 32.2)、19%(16.8 - 20.7)、12%(9.2 - 14.0)であった。「軽度の障害」の児の割合は、38.5%(33.7 - 43.4)、36%(33.4 - 38.1)、34%(30.2 - 37.4)であった。学校の支援を受けていた児は、在胎24 - 26、27 - 31、32 - 34の週の出生児の27%(22.9 - 31.7)、14%(12.1 - 15.9)、7%(4.4 - 9.0)であった。在胎期間が24 - 26週であった児の半数(52%、46.4% - 57.3%)は1つ以上の支援を受けていた。在胎期間が32-34週の児では、26%(21.8% - 29.4%)と半減していた。親が困難としていたのは児の行動であった。神経発達障害の割合は、在胎週数が短くなると高かった。また社会経済的状態がよくない家庭の児にその割合が高かった。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33910920

コメント
妊娠週数が短く、極小未熟児で産まれた児も助けることができるようになった。しかし、非常に短い週数で生まれた早産児には、重度/中等度の神経発達障害の割合が高く、軽度の神経発達障害の行動障害や発達協調運動の障害を含めるとその支援や対応が困難な児の割合が高いことが示された。教育や保健に関する機関に大きな負担を与えるとともに、その児の行動に対応する親が困難に直面していた。周産期医療が発達したとは言え、やはり障害を持つ児を少なくするには早産を防ぐことが大事であることを改めて示す貴重な論文であった。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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