難病Update

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シャルコー・マリ―・トゥース病マイクロRNA次世代 シークエンサー遺伝性末梢性ニューロパチー

2021.08.31

シャルコー・マリ―・トゥース病1A型のバイオマーカーとしてのマイクロRNA

MicroRNAs as Biomarkers of Charcot-Marie-Tooth Disease Type 1A

Hongge Wang*, Matthew Davison*, Kathryn Wang*, Tai-He Xia*, Katherine M Call*, Jun Luo*, Xingyao Wu*, Riccardo Zuccarino*, Alexa Bacha*, Yunhong Bai*, Laurie Gutmann*, Shawna M E Feely*, Tiffany Grider*, Alexander M Rossor*, Mary M Reilly*, Michael E Shy*, John Svaren

*From Translational Sciences (H.W., M.D., K.W., T.X., K.M.C.), Sanofi Research; Biostatistics and Programming (J.L.), Sanofi Development, Framingham, MA; Department of Neurology (X.W., R.Z., A.B., Y.B., L.G., S.M.E.F., T.G., M.E.S.), Carver College of Medicine, University of Iowa, Iowa City; Department of Neuromuscular Diseases (A.M.R., M.M.R.), UCL Queen Square Institute of Neurology and National Hospital for Neurology and Neurosurgery, University College London, UK; and Waisman Center and Department of Comparative Biosciences (J.S.), University of Wisconsin, Madison.

Neurology. 2021 Aug 3;97(5):e489-e500. doi: 10.1212/WNL.0000000000012266. Epub 2021 May 24.

遺伝性末梢性ニューロパチーであるシャルコー・マリ―・トゥース病1A型(Charcot-Marie-Tooth disease type 1A:CMT1A)患者の血漿中においてマイクロRNA(microRNA:miR)が増加しているかどうかを、miRプロファイリングを用いて対照とCMT1Aの血漿を比較した。次世代シーケンシングを用いてCMT1Aにおいて増加しているmiRを同定し、CMT1A検体と対照検体のスクリーニングを行った後、特定のmiRを定量的PCRによって検証し、タンパク質バイオマーカー及び臨床データとの関連を調べた。

広範なスクリーニングを行ったところ、末梢神経のシュワン細胞に多く発現している一連のmiRの増量が確認され、いくつかのmiR(miR133a、-206、-223など)が同程度に増加しており、症例と対照とを区別することができた。ニューロフィラメント軽鎖の量は、miR133aとの関連が最も強かった。さらに、シュワン細胞のものと推定されるmiR(miR 223、-199a、-328、-409、-431など)は、シュワン細胞に最も多く発現しCMT1A血漿でも増加していた膜貫通型プロテアーゼセリン5(transmembrane protease serine 5:TMPRSS5)と関連していた。

URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/34031204/

コメント
CMTは、臨床症状、電気生理学的検査所見、神経病理所見に基づいて,脱髄型と軸索型に大別される。脱髄型CMTで、神経伝導速度は38m/s以下、活動電位はほぼ正常または軽度低下を示し、腓腹神経所見では節性脱髄、onion bulbの形成を認め、17番染色体PMP22遺伝子の重複によるCMT1AがCMTの約半数と考えられている。

遺伝医学の進歩により、病態修飾薬の開発もすすんでいるが、臨床治験において重要なことの一つは、短時間で可能な効果判定法の開発である。今回、CMT1Aの臨床試験においてバイオマーカーの候補となる一連のmiRが同定された。miRの一部は、本疾患の発症の背景となっているシュワン細胞プロセスを反映している可能性がある。CMT1Aの病態把握、効果判定法に繋がる、重要な報告と考えられ取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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