Neeraj Narula*, Emily C L Wong, Mahshid Dehghan, Andrew Mente, Sumathy Rangarajan, Fernando Lanas, Patricio Lopez-Jaramillo, Priyanka Rohatgi, P V M Lakshmi, Ravi Prasad Varma, Andres Orlandini, Alvaro Avezum, Andreas Wielgosz, Paul Poirier, Majid A Almadi, Yuksel Altuntas, Kien Keat Ng, Jephat Chifamba, Karen Yeates, Thandi Puoane, Rasha Khatib, Rita Yusuf, Kristina Bengtsson Boström, Katarzyna Zatonska, Romaina Iqbal, Liu Weida, Zhu Yibing, Li Sidong, Antonio Dans, Afzalhussein Yusufali, Noushin Mohammadifard, John K Marshall, Paul Moayyedi, Walter Reinisch, Salim Yusuf
*Department of Medicine (Division of Gastroenterology) and Farncombe Family Digestive Health Research Institute, McMaster University, Hamilton, ON, Canada neeraj.narula@medportal.ca.
BMJ. 2021 Jul 14;374:n1554. doi: 10.1136/bmj.n1554.
超加工食品(ultra-processed food)の摂取と炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)のリスクとの関係を評価するために、21の低・中・高所得国の7つの地域(ヨーロッパおよび北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、中東、南アジア、東南アジア、中国)において、食物摂取頻度調査票(FFQ)のベースラインデータのある35 - 70歳を対象に追跡調査を行った。評価疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎を含むIBDである。対象者は2003 - 2016年に登録の成人116,087人で、追跡期間の中央値は9.7年であった。IBDの発症者は467人であった(クローン病90例、潰瘍性大腸炎377例)。超加工食品の摂取とIBDのリスクとの関連性はCox比例ハザード多変量モデルを用いて評価した。交絡因子を補正すると、超加工食品の摂取量とIBD発症のリスク比は上昇した。「1サービング以下/日」と比較したハザード比は、「≧5サービング/日」1.82(95%CI:1.22-2.72)、「1-4サービング/日]1.67(1.18-2.37)であった。ソフトドリンク、精製された加糖食品、塩味のスナックおよび加工肉を含む超加工食品の異なるサブグループについてもIBDのハザード比は上昇していた。クローン病と潰瘍性大腸炎との間の結果は同様であった。白身肉、赤身肉、乳製品、でんぷん、果物、野菜および豆類の単品の食品摂取とIBD発症の関連性はみられなかった。超加工食品の摂取量とIBD発症リスクは正の関連を示していた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34261638/
コメント
超加工食品とは、糖分や塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品である。スナック菓子、カップ麺、高カロリーの清涼飲料、チキンナゲットなどがある。糖尿病、肥満、がんのリスクを高めるとの報告もすでになされている。本研究は、近年目立ってきている炎症性腸疾患との関連をみたものである。摂取量が多くなるほど、IBDの発症リスクが高いことが示されている。通常の肉、乳製品、果物、野菜などの非加工食品の摂取量との間ではリスク上昇が見られなかったので、超加工食品自体がリスクを高めている可能性がある。近年、腸内細菌の働きと健康との関係の報告がなされているが、その影響などそのメカニズムの研究成果が待たれる。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生