難病Update

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B cell malignanciesCAR-TCD19

2021.09.24

再発または難治性B細胞悪性腫瘍を有する成人患者に対するCD19およびCD22を二重標的とするCAR-T細胞:第1相試験

CAR T cells with dual targeting of CD19 and CD22 in adult patients with recurrent or refractory B cell malignancies: a phase 1 trial

Jay Y Spiegel*, Shabnum Patel, Lori Muffly*, Nasheed M Hossain, Jean Oak, John H Baird*, Matthew J Frank*, Parveen Shiraz*, Bita Sahaf, Juliana Craig*, Maria Iglesias*, Sheren Younes, Yasodha Natkunam, Michael G Ozawa, Eric Yang, John Tamaresis, Harshini Chinnasamy, Zach Ehlinger, Warren Reynolds, Rachel Lynn, Maria Caterina Rotiroti, Nikolaos Gkitsas, Sally Arai*, Laura Johnston*, Robert Lowsky*, Robbie G Majzner, Everett Meyer*, Robert S Negrin*, Andrew R Rezvani*, Surbhi Sidana*, Judith Shizuru*, Wen-Kai Weng*, Chelsea Mullins, Allison Jacob, Ilan Kirsch, Magali Bazzano, Jing Zhou, Sean Mackay, Scott J Bornheimer, Liora Schultz, Sneha Ramakrishna, Kara L Davis, Katherine A Kong, Nirali N Shah, Haiying Qin, Terry Fry, Steven Feldman, Crystal L Mackall, David B Miklos

 

*Division of Blood and Marrow Transplantation and Cellular Therapy, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, USA.

 

Nat Med. 2021 Aug;27(8):1419-1431. doi: 10.1038/s41591-021-01436-0. Epub 2021 Jul 26.


CD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞(CAR19)の進歩は著しいが、投与を受けた患者の半数以上に進行が認められる。CAR19の投与後に進行が確認された大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者16例中10例では、CD19は検出されないか、検出されてもわずかであった。投与前の細胞表面におけるCD19の低発現は、増悪と関連していた。CD19陰性(CD19-
または低濃度(CD19lo)のB細胞性腫瘍の再発を抑えることを目的として、再発/難治性のB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)およびLBCLの成人を対象として、CD19および/またはCD22を標的とする二重特異性CAR(CD19-22.BB.z-CAR)の第I相臨床試験(NCT03233854)を用量漸増試験で行った。主要評価項目は製造上の実施可能性および安全性、副次評価項目は有効性とした。主要評価項目は達成され、製剤の97%が規定の細胞数を満たし、用量制限毒性は認められなかった。B-ALL患者(17例)の100%に奏効が確認され、88%は微小残存病変陰性で完全寛解(CR)を達成した。LBCL患者(21例)では、62%に奏効が認められ、29%はCRを達成した。CD19-22.BB.z-CAR治療後に再発したB-ALL患者の50%(10例中5例)およびLBCL患者の29%(14例中4例)においてCD19-/loとの関連が認められたが、CD22にはそのような関連は認められなかった。CD19-22.BB.z-CARのin vitro試験では、CD22で刺激した際はCD19で刺激した際と比較してサイトカイン産生の誘導が弱かった。この試験の結果は、CD19抗原の消失がCD19-22.BB.z-CAR細胞に対する耐性の主な原因であることを示唆している。また、すべての標的に等しい効力をもつ多重特異性CAR-T細胞の作製の難しさが明らかとなり、サイトカイン産生がCAR-T細胞の効力の重要な指標であることが示された。

 

URL

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/34312556

 

コメント

抗原消失がCAR-T療法を含む抗原特異的免疫療法の効果がでないもしくは再発の原因の一つとして知られている。そこでそれを乗り越える方法として、標的となる複数の腫瘍抗原の内いずれかが発現していればシグナルが入り抗腫瘍効果を発揮するCAR-Tの作成が試みられている。B細胞が腫瘍化したB-ALLやLBCLでは発現量の大小はあるもののほとんどの症例で腫瘍細胞表面上にCD19、CD22を発現している。単独抗原を標的とした場合、その抗原の発現がない、もしくは低い場合CAR-Tにシグナルが入らず結果抗腫瘍効果を発揮できない。B細胞腫瘍においてCD19、CD22の抗原の発現が両方とも低くなる可能性は低いと考え、本研究ではどちらかの抗原が少なくとも一つ発現していれば作動することが期待されるCAR-Tを設計、作成し、第I相試験に用いられた。結果としてCD19は十分認識して殺腫瘍細胞効果を発揮するが、CD22に対する認識は弱くCD19陰性CD22陽性の腫瘍細胞を排除する力は弱いと考えられた。試みとしては非常に興味深いがさらなる改良が必要と思われるものであった。

 

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄付講座 寄附講座教授   坪井 昭博先生

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