難病Update

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pimavanserinリスク/ベネフィットバランス

2021.10.26

高齢のパーキンソン病患者におけるpimavanserinの使用に伴う入院および死亡のリスク

Risk of Hospitalization and Death Associated With Pimavanserin Use in Older Adults With Parkinson Disease

Y Joseph Hwang*, G Caleb Alexander, Huijun An*, Thomas J Moore, Hemalkumar B Mehta

 

*From the Department of Medicine (Y.J.H., G.C.A.), Johns Hopkins University School of Medicine; Center for Drug Safety and Effectiveness (Y.J.H., G.C.A., T.J.M., H.B.M.), Johns Hopkins University; Department of Epidemiology (G.C.A., H.A., H.B.M.), Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health, Baltimore, MD; Institute for Safe Medication Practices (T.J.M.), Alexandria, VA; and Department of Epidemiology (T.J.M.), Milken Institute School of Public Health, George Washington University, Washington, DC. yhwang19@jhmi.edu.

 

Neurology. 2021 Sep 28;97(13):e1266-e1275. doi: 10.1212/WNL.0000000000012601. Epub 2021 Aug 13.

 

Pimavanserinの使用に伴う入院および死亡のリスクを明らかにする。2015年11月1日 - 2018年12月31日に、65歳以上のパーキンソン病の成人を対象とした長期療養施設の入所者に関する行政データおよび請求データを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPTW)を用いて、pimavanserin使用者と非使用者のバランスをとり、Fine-Gray競合リスクモデルおよびCox比例ハザード回帰モデルを用いて、1年後までの入院および死亡のリスクをそれぞれ推定した。

 

研究コホートにはpimavanserin使用者2,186例と非使用者18,212例が含まれた。Pimavanserin使用者は、非使用者と比較して30日入院リスクが高かった(IPTW調整ハザード比[aHR]1.24、95%信頼区間[CI]1.06 - 1.43)。Pimavanserinの使用には、非使用と比較して、90日死亡率の上昇との関連がみられ(aHR 1.20、CI 1.02 - 1.41)、この関連は180日後(aHR 1.28、CI 1.13 - 1.45)および1年後(aHR 1.56、CI 1.42 - 1.72)も持続していた。高齢者におけるpimavanserinの使用は、非使用と比較して、使用開始後1カ月の時点での入院リスクの上昇、および使用開始後1年まで死亡リスクが高いことと関連していた。

 

URL

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/34389652/


コメント

パーキンソン病における長期療養での問題点の一つは、非運動徴候の精神症状(psychosis)であるが、大部分は抗パーキンソン病薬剤による副反応と言われている。今回の論文は、経口5-HT2A受容体拮抗薬であるPimavanserin(日本では未発売)の使用に伴う入院および死亡のリスクを検討したものである。以前実施された、Pimavanserinのさまざまな精神症状に及ぼす検討試験では、有効性が示されたため早期に中止されるほどのベネフィットのある薬剤であり、効果が認められた患者では,投与を継続した場合に,中止した場合と比較して再発リスクが低かった。

 

今回の検討では、メディケア認定長期療養施設に入所している65歳以上のパーキンソン病患者において、pimavanserinが30日入院リスクの上昇、ならびに90日、180日、および365日死亡率が高いことと関連しているというクラスIIのエビデンスが得られた。大規模なリアルワールドコホートで得られたこれらの知見は、筆者らが指摘するように、パーキンソン病患者におけるpimavanserin使用のリスク/ベネフィットのバランスに関する決定に役立つ情報となる可能性がある。一方、より重要なことは、パーキンソン病の精神症状は、先述したように大部分が薬剤性であり、精神症状を起こさせないような、慎重な抗パーキンソン病薬剤使用法についての重要な警鐘を与える論文と考え取り上げた。

 

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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