難病Update

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CancerCannabinoidsChronic painMedical cannabisSystematic review

2021.10.26

慢性非がん性疼痛及びがん性疼痛に対する医療用大麻またはカンナビノイド:無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシス

Medical cannabis or cannabinoids for chronic non-cancer and cancer related pain: a systematic review and meta-analysis of randomised clinical trials

Li Wang*, Patrick J Hong, Curtis May, Yasir Rehman, Yvgeniy Oparin, Chris J Hong, Brian Y Hong, Mahmood AminiLari, Lucas Gallo, Alka Kaushal, Samantha Craigie, Rachel J Couban, Elena Kum, Harsha Shanthanna, Ira Price, Suneel Upadhye, Mark A Ware, Fiona Campbell, Rachelle Buchbinder, Thomas Agoritsas, Jason W Busse

*Department of Anesthesia, McMaster University, Hamilton, Ontario, Canada wangli1@mcmaster.ca.

BMJ. 2021 Sep 8;374:n1034. doi: 10.1136/bmj.n1034.

医療用大麻及びカンナビノイドが慢性疼痛に対して有効かどうかについての評価が定まっていない。そのために、MEDLINE、EMBASE、AMED、PsycInfo、CENTRAL、CINAHL、PubMed、Web of Science、Cannabis-Med、Epistemonikosの論文データーベース中の2021年1月までの臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。対象は、追跡期間1か月以上の無作為化した臨床試験のものとした。

該当する論文32件(成人患者数5,174例)が抽出された。29件は対照群を置いた試験であった。経口投与による論文が30、局所投与による論文が2であった。対象とした疼痛は、慢性非がん性のものが28、慢性がん性のものが4であった。追跡調査期間は1 - 5.5か月であった。医療用大麻の非吸入投与により、視覚的アナログ尺度(VAS)の評価で疼痛緩和は10%(95%CI:5-15)に認められた。経口投与で、身体機能についてはごくわずかだけ改善(SF-36身体機能尺度でリスク差(RD)4%[95%CI:0.1-8])、睡眠の質もわずかに改善(RD 6%[95%CI:2-9])が認められた。しかし、経口投与では情緒的機能、日常役割機能、社会的機能の改善は認められなかった。経口投与により、一過性認知機能障害(RD 2%[95%CI:0.1- 6])、嘔吐(RD 3%[95%CI:0.4 - 6])、眠気(RD 5%[95%CI:2- 8])、注意力低下(RD3%[95%CI:1-8])、悪心(RD 5%[95%CI:2-8])のリスクがわずかに増加していたが、下痢症状のリスク増加は認められなかった。確実性の証拠は中等度であった。不動性めまいは、3か月未満の追跡試験のRD 9%(95%CI:5-14)、3か月以上の追跡試験のRD 28%(95%CI:18-43)であった。そのリスクがあり、追跡期間が長くなると増加することには高い確実性の証拠が得られた。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34497047/

コメント
大麻やカンナビノイドは、難治性てんかんなどに有効であり、また痛みの管理や吐き気止めなどがん治療の副作用を軽減し、食欲を増進など、他の薬剤にない効能があることが知られている。厚生労働省は「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を設置し医療用大麻の扱いも検討している。この効能に明確なエビデンスがあるのかについて系統的に論文をレビューして評価したのが本論文である。痛みの緩和、身体機能、および睡眠を改善させることには中程度から高い確実性の証拠があると結論づけている。しかし、感情的、役割、社会的機能の改善には効果がないということの確実性が高いこと、また副作用として、認知障害、嘔吐、眠気、めまい、注意力の低下のリスクをわずかに増加させるとの結論であった。古代から利用されてきた大麻であるが、現代社会においては医療ニーズがあっても依存性薬物としての側面の規制と取り扱いの狭間にある薬物である。その薬物を必要としている患者がいる現実にどう対応するのか、行政と医療者が問われている。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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