Jana Werner*, Ilijas Jelcic*, Esther Irene Schwarz*, Elisabeth Probst-Müller*, Jakob Nilsson*, Bernhard Schwizer*, Konrad Ernst Bloch*, Andreas Lutterotti*, Hans-Heinrich Jung*, Bettina Schreiner
* From the Department of Neurology (J.W., I.J., A.L., H.-H.J.), Department of Respiratory Medicine and Sleep Disorders Center (E.I.S., K.E.B.), Department of Immunology (E.P.-M., J.N.), University Hospital Zurich; Lindenhofspital (B. Schwizer), Bern; and Department of Neurology and University Zurich Institute of Experimental Immunology (B. Schreiner), University Hospital Zurich, Switzerland.
Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021 Feb 2;8(2):e962. doi: 10.1212/NXI.0000000000000962. Print 2021 Mar 4.
抗IgLON5血清陽性で球麻痺型運動ニューロン疾患様の表現型を呈する5例を新たに加えることにより、抗IgLON5抗体関連疾患のスペクトルを拡大する。この5例の患者の臨床経過、脳MRIと検査の所見、および治療に対する反応の特徴を明らかにした。
患者は球障害とそれに伴う呼吸障害が重度であり、睡眠関連の呼吸障害および睡眠随伴症が多くみられた。すべての患者は、臨床的または電気生理学的に運動ニューロン疾患の症候を示していたが、筋萎縮性側索硬化症の診断基準を満たしてはいなかった。1例で嚥下と摂食の自律性が回復し、これは免疫療法と関連している可能性がある。IgLON5疾患は、球麻痺型運動ニューロン疾患様の表現型および睡眠障害を呈する患者において評価すべき重要な鑑別診断である。IgLON5疾患が免疫療法に反応する疾患であるかどうかを明らかにするために、根底にある病理生物学について理解を深める必要がある。
URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33531378/
コメント
2014年、抗IgLON5抗体関連自己免疫性神経疾患が初めて報告された(Lancet Neurol. 2014;13:575-86)。抗IgLON5抗体陽性で表現型として大脳皮質基底核症候群(CBS)に似た衝動性眼球運動障害や嚥下障害を特徴とする症例が2020年岐阜大学から報告された。治療法のない、CBSにとっては、鑑別すべき重要な疾患と考えられる。今回の報告は、同抗体陽性で、表現型として球麻痺型運動ニューロン疾患類似の症例についての報告である。原因不明の変性疾患に症候学的に類似した疾患が、自己免疫性疾患の範疇に入る可能性を示唆した論文であり、CBSなどの原因不明の変性疾患における病態解明の手掛かりになる貴重な報告と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生