難病Update

難病Update

combination therapycross-sectional studyHypercholesterolaemiaLDL cholesterolWHO region of Europe

2021.11.26

EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration(FHSC)に登録されている家族性高コレステロール血症の診断と治療の現状に基づく今後の世界的な展望

Global perspective of familial hypercholesterolaemia: a cross-sectional study from the EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)

EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)

Lancet. 2021 Nov 6;398(10312):1713-1725. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01122-3. Epub 2021 Sep 7.

欧州アテローム性動脈硬化症協会によるFamilial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)の登録者のデーターを使い、「ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症」の成人の診断と管理の現状について分析を行った。分析対象は、FHSCにおいて、臨床または遺伝子により診断されたヘテロ接合性家族性高コレステロール血症である可能性が高い、または確定された成人(18歳以上)の症例である。

登録者は61,612例あったが、分析対象者は56か国42,167例の成人(女性21,999例[53.6%])とした。31,798例(75.4%)はDutch Lipid Clinic Networkの診断基準で診断されている。欧州WHO事務局の管轄域の者が35,490例(84.2%)であった。登録時年齢の中央値は46.2歳(四分位範囲[IQR]34.3 – 58.0)、診断時年齢の中央値は44.4歳(IQR 32.5 – 56.5)であった。診断時40歳未満者は40.2%であった。心血管リスク因子を持つ者の割合(有病率)は年齢とともに徐々に上昇していた。そのリスクを持つ者の割合は地域により異なっていた。冠動脈疾患の有病率は17.4%(脳卒中2.1%、末梢動脈疾患5.2%)であった。未治療者ではLDLコレステロール値が上がると有病率が上昇していた。女性の有病率は男性の約2分の1であった。薬剤の投与状況については、スタチン系薬剤単独投与者は16,803例(81.1%)、多剤併用療法者は3,691例(21.2%)であった。男性のほうが女性よりもより効果の強い脂質降下剤を多く服用していた。

LDLコレステロールの中央値は、非服用患者では5.43 mmol/L(IQR 4.32 – 6.72)と高く、脂質降下剤の服用患者では4.23 mmol/L(IQR 3.20 – 5.66)であった。脂質降下剤の服用患者ではLDLコレステロール値は1.8 mmol/L未満の者は2.7%であった。多剤併用療法、特に3剤及びプロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の併用療法患者では、LDLコレステロール値が1.8 mmol/L未満の者の割合が高かった。発端者と比べ発端者以外の者の年齢は若く、LDLコレステロール値が低く、心血管リスク因子及び心血管疾患の有病率も有意に低かった(P<0.001)。

まとめると、家族性高コレステロール血症の診断が遅れている。発見後に単剤治療ではLDLコレステロール値の下がりが低く、早期に診断して複数の薬剤で治療を進めることが必要と判断された。

URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34506743/

コメント
家族性高コレステロール血症は遺伝的にLDLコレステロールが異常に高い病気である。診断が遅れると心血管系疾患、例えば冠動脈疾患の発症につながる。日本動脈硬化学会は、日本では、ヘテロ接合体の者は500人に1人以上、ホモ接合体の者は100万人に1人以上の頻度で存在し、約25万人以上の患者がいると推定している。家族性高コレステロール血症の者は、生活習慣の改善だけではLDLコレステロール値が下がらない。主にスタチン系薬剤の効果がある。しかし、単剤ではLDLコレステロール値が下がらない。複数薬剤で治療すると下がる者が多いとのことである。LDLコレステロール値が高い者の遺伝子検査をして、家族性の者を早期に多剤併用療法すると心血管疾患の併発を抑えることができるとしている。スクリーニングと早期多剤併用治療をどう進める体制をつくるのかが課題である。

監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生

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