2021.12.24
筋萎縮性側索硬化症の前頭側頭型認知症:臨床スペクトル全体における神経相関の共通点と相違点
Amyotrophic Lateral Sclerosis Frontotemporal Dementia: Shared and Divergent Neural Correlates Across the Clinical Spectrum
Camilla Cividini*, Silvia Basaia*, Edoardo G Spinelli*, Elisa Canu*, Veronica Castelnovo*, Nilo Riva, Giordano Cecchetti*, Francesca Caso, Giuseppe Magnani, Andrea Falini, Massimo Filippi*, Federica Agosta
*Neuroimaging Research Unit, Division of Neuroscience, IRCCS San Raffaele Scientific Institute, Milan, Italy.
Neurology Publish Ahead of Print DOI: 10.1212/WNL.0000000000013123. doi: 10.1212/WNL.0000000000013123. Online ahead of print.
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と行動障害型前頭側頭型認知症(behavioral variant of frontotemporal dementia:bvFTD)には、臨床的、遺伝的、病理学的なレベルでかなりの重複が認められている。症状の連続体のなかで、ALSによって自然に生じるものか、表現型とみなすべきかの点は、明らかではない。本研究では、MRIのコネクトミクスデータの数理モデルを用いて、ALS-FTDスペクトル全体における神経相関を読み解いた。ALS患者83例、bvFTD患者35例、健康な対照者61例を対象とした。ALS患者は改訂Strong基準に従って分類し、運動障害のみ(ALS-cn)54例、認知障害または行動障害あり(ALS-ci/bi)21例、bvFTDあり(ALS-FTD)8例であった。
対照と比較して、bvFTDには、前頭側頭葉と頭頂葉のネットワークが構造的にも機能的にも広範囲に破壊されているという特徴がみられた。これに対しALScnでは、より限局的な構造的破壊が感覚運動-基底核野に起こっているという特徴がみられた。ALS-ci/bi患者は「ALS-cn様」パターンの構造的損傷を示したが、感覚運動野の機能的結合性が亢進し、「bvFTD様」パターンのような機能的結合性の低下がみられた。
URL
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/34853179/
コメント
ALSにおいて、前頭側頭葉の関与によると考えられている進行性の行動障害や認知機能障害が、ALSの一つの経過か、表現型の相違によるものであるかの点を、Strong基準による分類及びMRIのコネクトミクスデータの数理モデルを用いて検討した論文である。結果は、ALS-ci/biではALS-cnと同様の構造的変化を伴いながら機能的再構成がうまくおこなわれていないことを示唆しており、ALS-ci/biがALSにおける異なる表現型であって疾患の悪化によって生じるものではないとする仮説を支持していた。表現型の差の存在を示したことは、ALSの原因として遺伝的要因の強さを示唆するものと考えられ、興味のある論文であり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生