2021.12.24
ミトコンドリア症の診断における全ゲノム解析の有用性の検討:コホート研究
Use of whole genome sequencing to determine genetic basis of suspected mitochondrial disorders: cohort study
Katherine R Schon*, Rita Horvath*, Wei Wei*, Claudia Calabrese*, Arianna Tucci, Kristina Ibañez, Thiloka Ratnaike*, Robert D S Pitceathly, Enrico Bugiardini, Rosaline Quinlivan, Michael G Hanna, Emma Clement, Emma Ashton, John A Sayer, Paul Brennan, Dragana Josifova, Louise Izatt, Carl Fratter, Victoria Nesbitt, Timothy Barrett, Dominic J McMullen, Audrey Smith, Charulata Deshpande, Sarah F Smithson, Richard Festenstein, Natalie Canham, Mark Caulfield, Henry Houlden, Shamima Rahman, Patrick F Chinnery*, Genomics England Research Consortium
*Department of Clinical Neurosciences, School of Clinical Medicine, University of Cambridge, Cambridge, UK.
BMJ. 2021 Nov 3;375:e066288. doi: 10.1136/bmj-2021-066288.
ミトコンドリア症の診断に全ゲノム解析を行うことが有用かどうかについて、イングランドの100,000ゲノムプロジェクトの2015 - 2018年間に登録されているミトコンドリア症として確定ないし疑いと診断されていた345例に対して、全ゲノム解析を行った。対象者にショートリード全ゲノムシーケンシングを実施して、選択された遺伝子のパネルの表現型、ClinVarによる病原性変異体について、Exomiserツールを使って分析し、上位10の核DNAの変異体の優先順位付けを行った。ミトコンドリアDNAの変異体は組織内のパイプラインを用いて検出し、病原性変異体リストと比較し13の神経障害のコピー数多型とショートタンデムリピートの解析を行った。変異体の分類は、ACMGガイドライン(American College of Medical Genetics guidelines)に基づいた。
ミトコンドリア症には95の異なる遺伝子が関与している。319家族中で、遺伝子診断により98家族(31%)が確定または可能性が高い症例とされた。また可能性が疑われる症例は6家族(2%)であった。14例(4%)は臨床診断だけの者であった。104家族に対して全ゲノム解析を行い、ミトコンドリア症と診断が確定したのは39家族(38%)だけであった。65家族(63%)はミトコンドリア症の症例ではなく、知的障害を伴う発達障害、てんかん性脳症、その他の代謝疾患、心筋症、白質ジストロフィーなどであった。全ゲノム解析を行わなければ見逃されていた症例であった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34732400/
コメント
ミトコンドリア症とは、ミトコンドリアの働きが低下することが原因でおこる病気である。大部分は遺伝子の変異によって発症する。全ゲノム解析は近年、低コストで、短時間に行えるようになっている。全ゲノム解析を行わないと、知的障害を伴う発達障害、てんかん性脳症、その他の代謝障害、心筋症、および白質ジストロフィーなどの者がミトコンドリア症と診断され、見逃されていることが示された。本研究は、遺伝子変異に基づく疾患の診断検査として、ターゲットを絞って全ゲノム解析を行うことが必要であることを示すものであった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生